yoruの記録

雑記ブログに見せかけてほとんどサッカー(Liverpool,Dortmund)の話。

南野は攻撃の新たなアクセントになれるか。【リヴァプール20/21シーズン展望】

 こんばんはyoruです。

今回は僕の好きなクラブ、リヴァプールについて。日本代表の南野が加入して今シーズンからしっかり観るという方も多いのでは。そんな方の為にも昨シーズンを振り返りながら20/21シーズンがどのようになるか考えていきます。

 

ちょっと長くなりそうなんで、です・ます調やめますね。

 

目標達成の昨シーズン

 昨シーズンのリヴァプールプレミアリーグ優勝が最重要課題だった。

 18/19シーズンでは完成度の高いサッカーを見せたものの、シティに1ポイント差で優勝を逃し、惜しくも2位。CLの優勝はとても大きかったが、やはり欲しいのは30年ぶりのリーグタイトル。そう意気込んで始まった19/20シーズンだったが、終わってみれば圧勝だった。

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32勝勝ち点99 2位シティに18pt差をつけて優勝した。

 やはり前線に長期の怪我人が出なかったのが大きいだろう。マネ、フィルミーノ、サラーの3TOPの爆発力は世界最高レベルだが、フィルミーノ38試合、マネ35試合、サラー34試合出場と厳しい日程の中でも常に出続けれたというのが強さであった。

 

 そして我らがキャプテン、ジョーダン・ヘンダーソンの活躍。「ジェラードの後のキャプテン」というキャプテン界の中で「長谷部誠の後の日本代表キャプテン」レベルに難しく、報われない役職を任されたこの苦労人がとうとう報われる時が来た。

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記者投票で決められる19/20 FWA年間最優秀選手を受賞した。

 基本ポジションは右IHながらファビーニョが怪我した時はアンカーを、さらにクラブW杯ではCBまで。なんなら右SBでプレーした試合も。しかしどこのポジションにいても豊富な運動量とフィジカルを生かしボールを獲る。さらにそこから一本のパスで攻撃の起点にもなる。

前にサラー、後ろにアレクサンダー・アーノルドという攻撃大好きっ子たちを上手くコーチングし、成り立たせてるのもこの人。同じポジションをチェンバレンとかケイタがやるとアーノルドとか守備サボり気味になって守備の強度が落ちるし、チーム全体が締まらなくなる。昨シーズン、初めて負けたワトフォード戦もこの人が怪我でいなかったからだ、と思っていたり。

トロフィー授与式で端っこにいた南野への振る舞いで人間的にも素晴らしさを見せつけてしまった。完璧かよこの男。

 少しヘンダーソンについて語り過ぎてしまいました。失礼失礼。とにかくリヴァプールにこの男は欠かせない。

 

戦術的な成熟

 では戦術的に昨シーズンを振り返ってみると、夏に大型補強はせずその分戦術的に成熟したプレーを見せた。前線からのプレスは大きな変更はなく、WGが相手SBのコースを、CFがアンカーへのパスコースを切りながら寄せるカバーシャドウを行い、相手CMにボールが出ればIHが強襲する。WGに出ればSBが、CFに出ればCBが同様に奪い取る。

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前線からのプレス時

ファビーニョは中盤でバランスをとりながら、状況に応じてスライドする。ボールを奪った後はその前への勢いそのままゴールに向かい走り、ショートカウンターを決める。マネ、サラー、フィルミーノの3人はショートカウンター時にはドリブラー、フィニッシャーとして才能を発揮する。

 

 しかし、このゲーゲンプレッシングが効くほど相手はボールを繋ぐのを恐れ、リヴァプールにボールを持たせようとする。そうした対策への回答が「ボールを持っても戦えるようになる」であった。そしてボールを持った時に脅威となるのがロバートソンとアーノルドの両SBである。

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ボール保持時の動き。ワイナルドゥムがSBの位置に落ちることもある。

 ボール保持時、マネとサラーは内側に入り相手SBとCBの間に位置することが多い。それは一番外側のレーンをSBに使わせ、そこから一撃必殺のピンポイントクロスを狙う、もしくは対角に精度の高いサイドチェンジで中盤を省略、そこからクロスと相手の裏のスペースをいち早く使うのが狙いである。またさらにワイナルドゥムやヘンダーソンのIHがSBが上がった後の位置に落ちて、後衛で3バックを形成することもよく見られた形だ。相手FWと3-2の構図を作り、フィードが得意なファンダイクをフリーにさせる。

IHは横の動きは少ないものの、SBの位置に落ちることもあればWG、SBとトライアングルを形成し、入れ替わりながら相手SBとCBの間を抜け出す動きも多い。

細かいことを言えば右サイドはサラーがポストプレーが得意、アーノルドがアーリークロスが得意なこともあって、あまりポジションを入れ替えるということはしない印象。逆に左はロバートソンがインナーラップしたり、マネが外に張って、ワイナルドゥムが抜け出す動きも多かったりする。

 このようなポジションの入れ替わりを行いながらジリジリと相手ゴールに寄っていく。そんな中フィルミーノは9番ながら、ファビーニョの横に落ちてビルドアップを助けたり、サイドに流れて中盤のスペースを開けたり、かと思えば前線でゴールを決めたり決定的なラストパスを出したりという、ピッチ全体を上から見てるんじゃねぇかみたいなことをやってくれる。というかむしろ全員がフィルミーノの動きを見て動いてると感じるくらいボール保持時はフィルミーノがゲームを作っている。

 

 このような以前から継続して行っていたゲーゲンプレスと、チームとして成熟した結果であるボール保持時のポジショナルプレーを武器に19/20シーズンは戦っていた。しかしギリギリの試合が多かったのも事実。前線のオプション不足が招いたリヴァプールの弱点である。

 

 

リヴァプールの停滞 

 ボールを持たせてくるチームに対してのリヴァプールのポジショナルプレーはある程度理解してくれたと思うが、いくつか弱点があるのも事実である。

 まずその一つは前線3人の身長が高くないという点。前線の3人は身体能力は高くジャンプ力もあるのだが、やはりプレミアのCBとまともに競り合って勝てるようなタイプではない。むしろ一瞬の瞬発力で優位性がある3人に向かって両SBから速く低いアーリークロスや精度の高い相手の裏を突くロングボールを使うために、SB・CBをフリーにさせる動きをボール保持時にしている。

 しかし、相手がDFラインをかなり低く敷き、予め3TOPが使う裏のスペースを消されると瞬発力の優位性も取れなくなってしまう。

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DFラインの背後、黄色のスペースを予め消す。

ロバートソンまでもFWに入り裏を狙いにいった11節アストンヴィラ戦など無理やりこじ開けた時もあるが、アーノルドやファンダイクからのボールが通らなくなると得点力は下がってしまう。

 こうして裏が取れなくなった時、フィルミーノが少し落ちてCBを引き出しスペースを作るのが次の対応だったはずだ。しかしここでもリヴァプールの弱点が見えてくる。それはフィルミーノしかボールの受け手がいないという点。

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フィルミーノがライン間を狙う。

上記の図のように裏を消されたリヴァプールはフィルミーノがポジションを落とし、DFラインと2列目の間でボールを受けようとする。こうすることでCBを釣り出し、開いた裏のスペースをマネとサラーに使ってもらうのが狙いだ。しかし、低いDFライン、コンパクトなDFブロックを組まれると、釣り出したCB裏のスペースはGKが、IHからのパスコースは相手CMに閉められフィルミーノへのパスは通らない、もしくは囲まれ潰されてしまう。

ヘンダーソンとワイナルドゥムが左右に開き相手ブロックをスライドさせても、狭いライン間でボールを受けるのはフィルミーノしかおらず、相手の二列目のスライドが間に合ってしまう。マネやサラーも降りてくる動きはあるのだが、前を向けなかったりで結局相手DFブロックの外でボールを回してしまうことになる。

また、ワンタッチで相手のライン間に縦パスを通せる選手がリヴァプールの中盤にいないことも停滞を打破できない要因の一つであろう。前線の控えであるオリギ、シャキリも基本的にはフィニッシャーであり中盤を助ける動きができる選手ではない。唯一フィルミーノのようにライン間で受けられ、走れる選手がララーナであったが、クロップリヴァプールの功労者の彼は今シーズン、もういない。

 

結果的にブロックの外でボールを回し、ロングボールが弾き返され、高く上がったSB裏のスペースを相手2トップに使われ失点するという試合がいくつかあった。前半戦唯一勝ち点を落としたマンチェスター・U戦、そして無敗記録が途絶えたワトフォード戦である。

中盤はフィルミーノに出させなければ良いから3人で足りる、SBはWBと1on1にして、2トップにしてSB裏を狙う。このような5-3-2,もしくは4-5-1にして外側に早い選手を置く、といった形が明らかにリヴァプールは苦手にしていた。

 

 

南野は攻撃の新たなアクセントになれるか。

 昨シーズンを振り返ったところで今シーズンを見据えていこうと思う。今シーズンはより対リヴァプールシフトを採ってくるチームが多いことは想像できる。DFラインを低くしてフィルミーノを潰してSB裏からカウンター。ワトフォードに続けと下位チームほどこうした戦術を採用してくるだろう。そこでこの対リヴァプールシフトに対するクロップの回答が昨シーズンの冬に加入した南野を入れた4-2-3-1である。

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新たな攻撃の選択肢になれるか

 今シーズンのプレシーズンマッチ、さらにはアーセナルとのコミュニティシールドでクロップは既存の3トップに南野を加えた4-2-3-1を多く採用した。

 南野の特徴はレッドブルグループであるザルツブルグで培った前線からのプレスとその勢いのまま速いスピードでのプレー、足を止めることなく動き続けスペースに走り込む能力、そして中盤の狭いスペースでボールを引き出し前を向くターンである。

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コミュニティシールド アーセナル戦 南野投入時

 アーセナル戦、南野は左MFで途中出場した。南野の主な役割は相手ブロックのライン間でボールを引き出し、かつ相手WBを引き付けることでロバートソンの上がるスペースを作ることであった。それに加えフィルミーノも中央をフラフラと捕まえられないような位置に立つことで、フィルミーノだけを捕まえていれば良いという状況から、南野とフィルミーノどちらに出るか分からないという二択を突きつけることができる。迂闊にCBがついていけば、サラーが裏のスペースを狙ってるだけでなく、南野がターン一発で前を向けるという能力持ち。

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瞬間的に6トップのような場面も見られた。

さらにJ・ゴメスがインナーラップする場面も見られ、右SBがアーノルドだったらと思うとこの南野を入れた4-2-3-1は超攻撃的布陣という事になるだろう。

 また、前線の4人は頻繁にポジションを入れ替え、相手DFにマークのズレを誘発させ、混乱に貶めようとする。この前線の流動性は4-3-3では見られなかったもので、今シーズンの新たな武器になる可能性がある。ただ、前線の流動性が増すということはボールを奪われてからのゲーゲンプレスも陣形が崩れた状況から行うことが多くなるということで、たびたびプレスを躱されるという場面もいくつかあった。そのため基本的には劣勢時、相手がドン引きしている状況を崩すオプションとしてクロップは考えてるだろう。にしても昨シーズンには見られなかった崩しが見られ、その中核を担うのが南野ということにはワクワクする。

 

2ボランチに関しては特に守備時不慣れな場面が見られたり、プレッシャーを受けてる状況でのワンタッチパスの精度がいまいちだったり、ポジションに迷いがある場面が見られた。ブラックプール戦ではC・ジョーンズが活躍するなど期待もあったが、バイエルンで同じポジションを守備の強度を保ちながらワンタッチで決定的なパスを出せるチアゴ・アルカンタラを獲得しようとしてるのは理解できるだろう。

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CL優勝の立役者は来るだろうか

 

苦戦必死の今シーズンで南野は輝けるか

 長くなってしまったがまとめを。今シーズン、プレミアリーグを苦戦するのは確実で、大型補強で戦力が充実したチェルシー、アルテタサッカーが浸透しつつあるアーセナル、絶好調のユナイテッド、ビエルサ率いるリーズも油断ならないし、もちろんシティもいる。中位、下位チームも勝ち点1を狙った戦いをしてくるだろう。リヴァプールに今シーズン変化が求められているのは確実で、その筆頭が南野なのだ。昨シーズンとは見違えるほど選手の連携もよくなり、ゴールという結果も出ている。堂々とトロフィーを持ち上げる日を楽しみにしたい。

 

 

 

 

 

明らかに書きすぎた。シーズン始まったらマッチレビューも書きたいと思います。(時間できれば)Twitterでリアルタイムで呟いてることもあるのでよかったらぜひ。

それでは。