【マッチレビュー】勝敗の差は”切り替えの慣れ”〜リバプール×リーズ・ユナイテッド 20/21プレミアリーグ第1節〜
こんばんは、yoruです。ついに開幕しましたね。プレミアリーグ。フットボールのある日常、最高です。
ということで今日はプレミアリーグ第1節 注目のマッチアップとなったリバプールとリーズユナイテッドの戦いを振り返っていこうと思う。めちゃくちゃ戦術的に見応えのある試合となったので読み応えのあるレビューになってしまった。ぜひこれからリバプールをより深く見ていきたいと思っているあなた、ぜひ最後まで読んでいただきたい。
ちなみに前回、昨シーズンのリバプールの戦術についてもまとめたのでこちらも併せて是非。
【スタメン】お互いの武器で殴る人選
まずはお互いのスタメン紹介から。
リバプールは目立ったところといえばアンカーのところ。ファビーニョではなく怪我明けのヘンダーソンがスタメン。そして左IHにはケイタ。正直プレシーズンのパフォーマンスはそこまで良くはなかったファビーニョだけれど、それは2ボランチの不慣れから来てたものだと思っていたのでヘンダーソンのスタメンにはびっくり。ケイタはプレシーズンの出来からも納得だけれど、この試合では長所が裏目に出て狙われる結果になってしまった。それでもプレシーズン試していた4-2-3-1ではなく慣れ親しんだ4-3-3で「まあ、いつものやつで殴ります」というスタメン。
対するリーズ。というかこのチームを語るにはまず監督ビエルサを紹介しなければならないのだけれど、それだけで1記事、いや10記事くらい書かなきゃいけないし、そんな事してる間にシーズン終わってしまうので、みなさんにはこちらのジェイさんのnoteを読んでもらいたい。昨シーズンの情報だがよく書かれていて分かりやすいのでおすすめ。
こちらでも簡単に紹介するとリーズは奇人が作り上げた変態的な超攻撃的サッカーチーム。昨シーズンCBから攻撃の司令塔となっていたホワイトが抜けたものの、ヨークシャーのピルロことK.フィリップスが中盤の底から司令塔となってゲームを組み立てる。んでなんと言っても全員がめちゃくちゃよく走る。これはビエルサのチームには全て共通していて、3シーズン目を迎えるリーズにも叩き込まれている。
この試合でも昨シーズン2部を制したメンバーとそれほど変わらないメンバーを並べてきており「昨季、圧倒的なチャンピオンだろうと知らねぇよ。こっちのフットボールをするだけだから」というビビリ0の人選。試合が始まってみるとリーズの選手たちはマジでビビってなかった。
【前半】リーズのマンツーマン守備とすぐに対応するリバプール
リーズの守備は非常に独特なもの。それはマンツーマンで人に付く守備だということ。基本の立ち位置は4-1-4-1だけれど、その状態から自分の近くにいる相手に付き、そのままどこまででも付いていく。
最終ラインは一人保険として残しておき、それ以外はマンマーク。あんまりDFラインとか関係ない。中盤にぽっかりスペースができることもあるけど許容してる。もちろんリバプールもマンマークを剥がす為、スペースを作る為に動き回るのだけれど、斜めの動きにはどこまででも付いていき、横の移動はマークが受け渡し出来そうな時はスライドする感じ。
で横パスさせればいいや守備じゃなくて、前を向かせないことは絶対の約束で、それに加え少しでも隙が出ればボールを奪いに来るのも守備のポイント。この守備を90分間持続させる。現に試合開始直後からリバプールはボール保持が安定せず、この試合全体を通してもボール支配率はリバプール48:52リーズの方が僅かにだが高かった。
多分この守備で一番苦労したリバプールの選手はアーノルドで、得意のサイドチェンジも自分にも相棒のロバートソンにもマークが付いていて出せない。というかそもそもフリーで前向けないって感じで昨季二桁アシストした若者は目立つことができなかった。
ではリバプールはこの守備にどう対応したのかというと、一つはフリーのCB、もう一つはレイオフの活用。リーズがマンツーマンで守備をしているということは、リバプールの選手からすれば自分のマークが外れれば完全にフリーになることができるということであり、前を向ければチャンスに繋げられるということ。
上記のマンマークの図からもわかるようにリバプールのCB2人とリーズの1トップ、バンフォードは1対2になってしまう。バンフォードもカバーシャドウでうまく消す時もあるけれど、ずっと消せるわけではない。CBのどちらかがフリーになれる場面が存在して、パスを出すことができる。さらにそこでリバプールは前線の選手が降りてきてレイオフ、いわゆる落としを使う。
レイオフとは上記の図のように背後からプレスが来ている中で、一人ではボールを貰って前を向けないけど、DFを引き付けながら落としのパスを使うことで2人掛かりで前を向けるというもの。マンツーマンにはこのレイオフがまあ刺さる。これを利用して開始すぐ2分に上記のレイオフでフリーになったケイタからフィルミーノのチャンス、前半4分にはボックス内でサラーのポストプレーからケイタがまた落としのパスを貰いにいこうとした瞬間にリーズのCBが少し離れてしまったところでサラーが前をむけてシュート。そのシュートがハンドになりPKで先制。さらには19分、アーノルドから左IHに流れていたケイタに楔、その落としをファンダイクが貰い、フリーの状態から前線に走っていたロバートソンにロングパス。そのこぼれ球がCKになりリバプール2点目へと繋がっていく。
コーナーキックではPA内の全員がファンダイクをフリーにさせるような動きで決めた2点目と、そのファンダイクを囮にしてこぼれ球を狙うようにサラー、フィルミーノ、ワイナルドゥムが止まって待ち、見事にサラーが決めた3点目とどちらもデザインされたプレーで流石の武器の多さを見せつけた。
【前半】リーズの狙いある攻撃
じゃあ殴られっぱなしかといえばリーズも自分たちの狙いがギュッと詰まった攻撃をしてきた。まずリバプールの守備は基本的に前から奪いに行く守備な訳だけど、左右、特にマネとサラーに若干の守備意識の違いがあり完璧な左右対象なプレスではなくリバプールの左に追い込む守備となることが多い。
大体こんな感じ。この時重要なのがリバプールの中盤3人で、前線の動きでパスコースが限定されたところに自分のマークを一瞬捨ててまでプレスをかけるスピードと思考が必要な事。上記の状況ならワイナルドゥムは背後のエルナンデスを捨てながらエイリングに、ケイタはクリヒを捨てながらフィリップスにプレスする必要がある。ちなみにもしそこでボールが取れなかった場合、エルナンデスはヘンダーソンが、クリヒはゴメスが出て対応する。
しかし、前半12分、上記のような状態でGKからフィリップスにパス。この瞬間のケイタのプレスが遅れ、フィリップスはフリーで前を向いてしまった。司令塔は右WGのハリソンにロングボール。ハリソンは見事なドリブルでアーノルド、ゴメスを躱し右足でニアにシュートを刺した。
このフィリップスにパスが出た瞬間のワイナルドゥムを見ていただきたいのだが、「なんでフリーなんだよ!」って感じで激おこである。んで、ケイタも「ヤベっ、俺だ」って感じで慌てて出ていってるのがわかると思う。普段ならヘンダーソンが上手いことやってくれるところだが、ケイタのまだちょっとな〜ってところが出てしまった。
じゃあ勇気を持って突っ込めばいいのかというと「突っ込んできたらその裏使うよ」っていうさらなるリーズの狙いがあった。
GKからサラーを越してSBに出たボールに対して、ケイタはプレス。ただダラスはワンタッチでケイタの後ろのクリヒへ。
さらにクリヒはワンタッチでダラスとワンツー。あっさり吊り出されたゴメスの裏を取られてしまう。まあその後はファンダイクの裏に浮き玉が出て、戻りながらの対応となったファンダイクにミスが出てしまったのだけど、これはもうゴメスの裏を取られた時点で決まっていた点。ファンダイクも軽率ではあったけど、このファンダイクにミスをさせる状況をうまく作り出したリーズの狙い通りと言うべきだろう。
GKからピンポイントでSBに、しかもその浮き玉をIHとワンツーできるのはトレーニングの成果だろうし、狙いがないとできないプレーだ。
こんな感じでリーズはまず後ろでフリーな状況ができればすぐさま前線にロングボール、こぼれ球が回収できればリバプールのIHの裏を突いてくる攻撃を終始続けていた。加えて言うと、ファンダイクはフィジカルも強いし、スピードもあるのだけれどあんまり突っ込みに行く守備はしない、どちらかというと遅らせて相手に仕掛けさせたところで体を入れて守備をするタイプ。逆にゴメスは結構前に突っ込んで行ったり、マークにビッチリついていく守備をするタイプ。普段はこのゴメスの矢印が前に、ファンダイクが後ろ目に向いてるからうまくチャレンジ&カバーの関係ができているのだけど、この日のリーズは組み立てはファンダイクの前にバンフォードが流れてきて右を起点に、そこにクリヒが斜めに流れてきてゴメスを釣り出すというように、普段とは矢印の向きが逆の対応になることが多く、ど真ん中にスペースをポッカリ作るシーンも結構あった。(41分とか。)
ただ、リーズはやっぱり押し込んだところ、最後のプレーでミスが出てしまったり、リバプールも3点のうち2点はコーナーキックからの得点で、なんだかんだ言ってリーズの最後の抵抗に阻まれてなかなか得点には結びつかなかった。
という感じでまさに殴り合いって感じで3-2で前半が終了。リバプールファンはヒヤヒヤであった。
【後半】修正するも同点に。
後半になってもやることは変わらない両チーム。ただ、流石に前半釣られすぎたゴメスは怒られたのか前半ほど前に出ることはなくなり、代わりにアーノルドが前に出ていくことが多くなった印象。おかげで右サイドの守備がちょっぴり安定して、ケイタの攻撃での絡みも増え49分決定機。けれどもGKメリエナイスセーブ。
また58分には守備で狙われていたケイタに変わってファビーニョ投入。これでヘンダーソンが左IHになりいつもの布陣に。これでさらに守備の安定感は増した。やっぱりヘンダーソンがアンカーだと前に前に感が強すぎて裏取られることが多いというか、ファビーニョの方がしっかりDFを埋めてくれるので安定感はある。
ただ怪我明けのヘンダーソン無理はできない。66分でC.ジョーンズと交代。しかしそのすぐ後のワンプレーでリーズは同点に追いつくのだ。このリーズ3点目のシーンも狙いは一緒で、右側に人を集めてファンダイクを釣り出す、ゴメスには人をつけてカバーに行かせないようにして、開いたど真ん中のスペースにIHが走り込む。
図にするとこんな感じ。瞬間的にリーズの選手4人が走り込んできてるのがわかる。しかもCBは引き付けておいて一番危険な真ん中を開けておくという。
こんな感じで簡単に書いてるけど、シュート自体は難しいものだし決めたクリヒは素晴らしいの一言。このクリヒをマークすべきだったのはジョーンズなのだけど、入ってすぐにあのランについて行けっていうのはちょっと酷。一つ言えるとしたらロバートソンの寄せが遅れてコスタにフリーでパスを出させてしまった点かな。背後に走ってきたエイリングに気が行ったのだろうけど、マネが戻ってきてくれてたからね。。。
【後半】結果を分けたのは走り慣れ
と、同点にはなったんだけど時間が経つに連れてリバプール優勢に。リーズは流石に前半と同じ勢いをずっと保つのは厳しいらしい。特にリーズのWGは結構キていた。
というかそもそもこのリーズの「前線からプレスに行って奪ったら縦に早く、後ろがフリーならロングボールでまず前線に、IHやSBはどんどん前に走っていく」という戦術、よくよく聞けばリバプールのことにも聞こえないだろうか。というかリバプールの十八番みたいなものでもある。最近は相手が引いてカウンターを狙ってくるからボール保持の戦い方も覚えてきたけど、そもそも走り合い上等!殴り勝つんだぜ!ヘビーメタルだぁ!でCLも準優勝、優勝してきたもので、その慣れの部分が圧倒的にリーズより多いのか終盤になってもリバプールの選手はなんかへっちゃらって感じ。
ということで70分くらいからはずっとリバプールペース。全体を通しての支配率は先述したように互角なわけだけど、70分からの支配率はリバプール58%と後半のペースっぷりがわかる。
ってことでまだまだ元気なマネ、サラー、フィルミーノの3人に加え、WGのマンマークが緩くなって上がれるようになってきたSB2人、そこにジョーンズなんかが加わってくると対応しきれなくなり、サラーが個で1人剥がし、マネ経由でフリーのフィルミーノが決定機。それで得たCKでロドリゴがファビーニョを倒してPK。サラーが本日2本目のPKを決めてハットトリック達成。
最後はマティプ入れて守備固めして逃げ切り4-3で勝利した。
最後に
なんとか逃げ切ったものの危うく刺され殺されそうになったリバプール。サラーの決定力には流石の一言。ケイタ君とゴメス君はもうちょっと守備頑張ろうね。ただ、リーズのような攻撃を仕掛けてくるチームがシティの他にあるかどうかは分からんので、今日でた弱点もそこまで悲観する必要はないのかもしれない。ただザルツブルグ戦といい、ストーミングチームというリバプールと同じ土俵に上がって戦って来られるとなんかエンターテインメントになってしまうのは仕方がないのか?面白いのでいいんですけど、結果を見ると冷や冷やします。心臓によくない。引いて守る相手には南野4-2-3-1があるけど、こんなチーム相手にはどうするんだろう。中盤にスライドせずにSBにビッチリマークつかれるとサイドチェンジも発動しづらいのも発覚してしまった感がある。やっぱり中盤で仕事できるチアゴ必要なのかなぁ。。。
リーズさんは相手が悪かった感がありますね。他のチームなら十分殴り殺せたと思います。ただ、シーズン通してこの試合を続けられるのかは不安なところ。怪我人とか出たらどうするんだろう。あとセットプレーの弱さはどうやらあまり変わってないようで。まあビエルサらしいっちゃらしいですけど。でもやっぱり見てて面白いですね。これからも注目したいところ。
ということで次からはこんなに書きません。ビエルサだからやぞ。
前回の記事も読んでみてくださいな。
それでは。