yoruの記録

雑記ブログに見せかけてほとんどサッカー(Liverpool,Dortmund)の話。

【マッチレビュー】利益か不利益か 〜エバートン×リバプール 20/21プレミアリーグ第5節〜

こんばんは、yoruです。寒くなってきましたね。僕は暑いのより寒い方が好きなのでいいんですけど、秋って無くなったんですか?

 

今回は10/17に行われたプレミアリーグ第5節、エバートンリバプールマージーサイドダービーを振り返っていこうと思います。 

ナショナルマッチウィークを挟んでの試合だったので、プレビューを書きました。こちらを読んでからだと、より楽しめるかと。よろしければ是非。

yoru-li.hatenablog.jp 

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【スタメン】不安なところは対処療法で。

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スタメンはこちら。

最後にダービーで勝ったのは10年前というエバートン。ここまで夏の補強組のアラン、ドゥクレ、ハメスが大当たりで、対リバプールで特別に人を入れ替えることはせず、4連勝の良い流れを持ち込むために変わらず4-3-3の布陣。怪我で出場が危ぶまれたリシャーリソンも間に合った。

対してなんか今季怪しそうなリバプール。前節から3枚入れ替え。これはプレビューでも書いたが、個人的に今季の不安定さの原因はケイタの中盤のリスクマネジメントと、それに伴って最終ラインが晒される状況の多発だと思っているので(その分攻撃面で変化は起きているが、ヴィラ戦は収益がマイナスだった)、そのポジションにそのリスクマネジメントが完璧なヘンダーソンが戻ってきたことは大きい。さらにここまでリーグ戦フル出場&代表戦3試合、60分&フル出場×2と酷使されまくりで、前節流石に疲れが見えていたワイナルドゥムに変わって、代表選がなくコンディションも万全なアゴが左IHでスタメン。ハメスの守備参加が怪しいので、そのエリアからピッチを全部使えるチアゴが入ることによって相手に的を絞らせないのが狙いか。CBにはマティプが戻ってきたことで、ファンダイクとマティプの空中戦に滅法強いCB2人が並ぶことに。絶好調のDCLの空中戦をこの二人で止めたいところ。

人が3人も変わったからと言ってゲームプラン自体は変えないリバプール。あくまで走り、点を取り、主導権を握るという目的は変わらない。むしろ前節まで崩れていたバランスを整えるように、対処療法のように対応してきた。

 

 

【前半】弱みが出るか、強みを出せるか

クロップのリバプールアンチェロッティの対戦はナポリ時代に4回あるわけだが、結果的にも内容的にもナポリが優勢であった(グループステージで勝ち進んだのはリバプールなのだが)。そのアンチェロッティの対策というのが、ボール非保持時には4-4-2のブロックを形成し、1対1に強いマネにはマンマークで対応。上がってくるSBにはカジェホン、インシーニェのSHがついていって、開いた真ん中のスペースは2トップのメルテンス、ロサノが埋める。降りてくるフィルミーノに対してナポリの2ボランチはそこまで気にせず、むしろ入ってくるIHに強めにアタックしましょうというもの。まあ早い話、『全員自陣に戻ってカチコチブロックを作る&中長距離のパスを出させて連続的な攻撃をさせない』というもの。

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19/20 CL グループステージ第1節

得意のSBからのクロスなどの中長距離パスを使っても、リバプールの前線は空中戦強くないし、むしろナポリの方がクリバリ、マノラスという強力CBを揃えていてほぼ勝ち目が無かった。去年のグループステージ第5節ではナポリは右SBに本職CBのマクシモビッチ、その前にディ・ロレンツォとガチガチの布陣にするなど、こんなナポリから4試合やって2得点しかできてないんだから完敗とっていいだろう。しかも2年連続同じような展開でリバプールは回答を見出せなかった。

 

さてなぜエバートンの話の前にナポリの話をしたかと言うと、このナポリ時代の対リバプールシフトという実績と経験値を持っていながら、アンチェロッティエバートンの選手に同じようなタスクを課さなかったから。そしてそれは主にハメスとリシャーリソンの守備タスク。

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ハメスはロバートソンを見ると言うわけでもなく、ファンダイクからのフィードを牽制するという動きを続けるわけでもない感じ。リシャーリソンは中盤を4枚にするわけではなく、アーノルドを見ておけと言われていた感じ。ただそこまで深い位置までついて行こうとはしない。つまり、中盤は5枚ないしは4枚のブロックを組んでスライドしながらゾーンで守るというより、リシャーリソンはアーノルド、アンドレ・ゴメスはヘンダーソン、ドゥクレはチアゴと明確に見る人が決まっていたようで、本来ロバートソン担当であろうハメスが、ドゥクレからすればサボられるとロバートソンはフリーになってしまうという状況が多かった。

マネにコールマンのマンマークをつけるのは変わらない一方で、この決め事はナポリ時代からの大きな変更点で、メルテンスカジェホンのように守備にまで奔走させるのは、過密日程&代表戦明けのハメスにとってデメリットが多い、むしろ攻め残りさせてカウンターの起点&リバプールの攻撃参加の牽制になると、アンチェロッティは考えたのだろう。ナポリのようにロースコアで耐えて勝つ狙いより、多少殴られても殴り返せるという算段。ということでこの試合はそのハメスの強みが出るか、弱みが出るかで流れが変わっていく。

 

ということで早速、前半2分にスコアが動くことになるのだが、それは弱みが出た形

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アーノルドがボールを持った時に、ヘンダーソンがサイドに流れる動きを見せる。この動きをされると、スペースというより人につくエバートンはアンゴレ・ゴメスが出ざるを得ない。そうして開いたスペースにサラーが降りてきてパスを貰い、埋めに来たアランもフィルミーノとのワンツーでいなし、マネの背後でフリーのロバートソンへ。コールマンはマネのマークを外して出て行ったものの遅れて出て行ったために、一発で交わされ、マークが外れたマネがクロスを受け得点。コールマンからすれば決死の思いでマネのマークを外したのだから、アランとドゥクレがマネを捕まえるまでの時間をかけさせる必要があった。

先制のすぐ後の4分のプレーも、マティプからのロングボールをサラーがキープ。ヘンダーソンとフィルミーノが絡むことで、アランとアンドレ・ゴメスに対して数的優位を作り、また左サイドでフリーのロバートソンへ。この時ハメスはなんとなく戻ってる風。左サイドからのクロスにヘンダーソンとフィルミーノが飛び込むチャンスを作れていた。ドゥクレやアランからすれば目の前のIHを見ながら、サイドに走ってくるSBには出て行って、後ろから降りてくるWGも気をつけなければいけないという明らかに多すぎるタスクを任されていて、ただ、崩壊まではさせないのだからやっぱりこの中盤すごいわ。んで、このあとのCKからのプレーでファンダイクが大怪我してしまうのだからサッカーの女神も結構残酷でエンタメ好きな人である。

 

 

前半6分くらいにファンダイクがいなくなったことで、ここまでファンダイクに競り合いで2戦2敗だったキャルバート=ルーウィンがボールの収めどころとして機能してくるように。こうなるとリバプールも前線からガツガツプレスしても、苦し紛れのロングボールが収まっちゃったりするのでちょっとプレスは自重し始める。むしろエバートンを引き出して中盤で奪いたい感じ。あと、やたら伸びてくるピックフォードのロングキックもちょっとウザい。

んで、DCLがボールを収められる、エバートンの最終ラインは少し余裕ができるようになると、エバートンとしてはビルドアップに挑戦することになる。で、その時に核となるのがハメス・ロドリゲスになる。

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アンカーからSBにワンタッチでSBに前を向かせるのは、対リバプールプレスのお手本で、そこにはリバプールの左IH、この試合ならチアゴが寄せる決め事になっている。そこで取れなくても、ハメスにはロバートソンがついていくので前は向かせない決まりだが、ドゥクレがロバートソンの裏に走りこむタイミングが良く、一瞬ロバートソンが躊躇った隙に、ハメスからDCLへ綺麗なスルーパス。ロバートソンの裏のケアはゴメスの役割なので逆を撮られたゴメスは追いつけず、シュートはブロックしたものの、そのCKから同点に。ドゥクレはこの試合、ハメスの立ち位置を常に確認しつつ、気が効く位置に走るという攻守でいろいろ気が使えるモンスターだった。

 

かといって毎回この動きをハメスは狙うわけではなく、むしろ相変わらず中盤、特にヘンダーソンファビーニョでボールを奪うことは多く、チャンスを多く作れていたのは中盤のトランジションからのリバプール。ただエバートンもCBのフィジカルとピックフォードの好セーブもあって1-1で前半終了。

 

エバートンのハメス起用による弱みは、中盤3人が頑張るというシンプルで個人に頼る方法でなんとかなった感。リバプールはこれを続けていけば点取れそうかなって感じはしている。中盤のトランジションは経験値でなんとかというプランだろうか。

 

 

【後半】いるべき人がいない中で

リバプールのマスターピース、アリソンとファンダイクがいない状況ではビルドアップの質が大きく落ちる。そこでエバートンは後半からプレスを強化。ロングボールを蹴らせて回収したい狙い。

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前半に比べてハメス、リシャーリソンはSBを背後で消すということを強く言われたのか、曖昧にCBまで行くことは少なくなった。んで、アンドレ・ゴメスとドゥクレの2人がCBまで出るように。アリソンやファンダイクであれば浮き玉で背後のSBやチアゴヘンダーソンに出せたのかもしれないが、合計約200億の2人がいなくなってしまった今、そう贅沢は言えない。なんとかサラーやマネ、フィルミーノにロングボールを届けたいが、アランが鬼のような速さでカバーしてきてなかなかボールを持てない時間が続く。50分、59分にハメスから決定機が二回できたが決めれず。ただ、ファビーニョとチアゴの距離が近く、プレスを受けやすかったのも事実。もう少し斜めに段差をつけるポジションを取れればプレスを掻い潜れる回数も多かったような。

また、ビルドアップ時も前半の形に加え、ハメスがIHの位置まで降りてくることでプレス回避を披露。これはナポリ時代にファビアン・ルイスが使ってたプレーに近い。瞬間的にアランとハメスの2ボランチになることで、リバプールのプレスの隙間を使い、ワンタッチでSBにはたく。70分ぐらいまでは厳しい時間が続いた。

 

ただ、ロングボールでスローインやファウルを獲得した時、つまりプレスを回避した時のエバートンの守備はあまり改善されておらず、リバプールの追加点はスローインエバートンがセットした守備の時。

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相変わらずマティプ、ゴメスにはそこまでプレスが掛からないので、マティプファビーニョの脇まで持ち上がる。当然ズンズン運ばれたらきついので、アンドレ・ゴメスとリシャーリソンが釣られて塞ぐが、マティプからフリーのアーノルドに。さらにアーノルドから、アランとゴメスの間でうけるマネに。この縦パスにはドゥクレよりゴッドフリーがそのままついていく。ドゥクレは後半からハッキリとロバートソンを見るように言われたのかもしれない。この縦パスでさらにきゅっと内側に絞らされることになったエバートンの中盤。マネ、フィルミーノと繋ぎ。落としを3センターの脇のポッカリ開いたスペースで待つヘンダーソンへ。ヘンダーソンからのクロスは皆に弾き返されるも、ダイレクトでサラーが弾き返してゴール。

浮いたこぼれ球をダイレクトで叩き込めるサラーはさすがである。

 

追いつきたいエバートン、働き過ぎのアンドレ・ゴメスとドゥクレをシグルズソンとイウォビにチェンジ。433からはっきりハメスをトップ下に置いた4231にしてきた。

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これでハメスが明確にゴメスにプレス、ロバートソンはイウォビが見る形に。アーノルドが開くこともあるけど、その先を止めておけばアラン、シグルズソンがなんとかしてくれるという感じ。これでまたなかなかボールを持てないリバプールは劣勢に。その中でのフィルミーノに変えてジョッタ投入は空中戦の強さ、キープ力考えると南野よりジョッタかなってなっちゃう。後ろから繋げないからしょうがないね。さらにハメスが中央から至る所に顔を出して来るのでとても厄介。エバートンの同点弾はヘンダーソンの背後で受けたハメスからディーニュ裏抜け、精度の高いクロスからキャルバート=ルーウィンのヘッド。ハメスからのパスの時に一瞬フェイントを入れてるのが憎い。アーノルドの裏は出し手がフリーだとあんなもんよ。ゴメスは飛んで欲しかったな。

 

その後はピックフォードのキックミスからのこぼれ球のトランジションでリシャーリソンが退場に。10人になってチアゴの体の向きと全然違う方向に出す変態パス無双が始まるが、VARでオフサイド。なんかリバプールファンからするとその時点で目の色は失われてしまった。

 

ということでマージーサイドダービーは2-2の引き分け。引き分けの試合だけど、エバートンは収益プラス、リバプールは収益マイナスみたいな試合後だった。

 

 

【まとめ】これからどうしよう(涙)

 エバートンからすれば十分な引き分けといったところだろうか。今季好調のハメスとDCLはリバプール相手でも期待通りの活躍。アラン、ドゥクレはさすがだった。自分たちの弱みは受け入れた上で、なお強みが出せて2-2であればプラン通りだろう。流石のアンチェロッティである。前線、中盤の替えが少ないことが気がかりだが、ビック6とは違いヨーロッパのカップ戦がないこともフィットネス的には大きい。この調子でメンバーを揃えていけるなら、前半戦トップ4入りも現実的。あとゴッドフリーも初戦、スクランブル投入にしては及第点なのでは。

 

さて、リバプールは困ったことになっちゃった。この試合だけ見れば『勝てた試合だったのに勝てなくなった』というところか。活躍したDCLもファンダイク相手に90分良い勝負ができたのかということもあるし、アリソン、ファンダイク不在ではビルドアップがやはり厳しい。エバートンのように前線でターゲットになれる人もいないので、こぼれ球をなんとか、という時間はこれからもあるだろう。ただ、チアゴの存在はやっぱり効いていて。あの体の向きと違う方向に出すパス、変態パスに味方も騙されてるところはあるし、433のIHはまだ慣れてないのか2ボランチみたいな動きになってる時間もあって、まだ成長の余地がある。周りとの連携は時間が解決してくれると思うので、そうなった時にボール保持時の強みを楽しみにしたい。あと復帰したヘンダーソンは流石の一言。トランジションの奪いっぷりに、攻撃時のランニング。まだこの人に頼ることが続くんじゃないだろうか。

VARに関しては機械の精度を超えたところの判定は人間の目で決めてもらいたいと思う。最後のチアゴのパスが出た瞬間の画像も、チアゴの足の部分ブレてたし。ボール 3つくらいになってたからね!!!本当にあの瞬間がパスが出された瞬間なのかわからないじゃん!

 

しばらくは殴り合いの心臓に悪い試合が続きそう。見る方の体力持つかな。

 

それでは。

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