yoruの記録

雑記ブログに見せかけてほとんどサッカー(Liverpool,Dortmund)の話。

【マッチレビュー】トータルで見れば 〜リバプール×アーセナル 20/21プレミアリーグ第3節〜

全てのフットボールファンの皆さん、こんばんは、yoruです。

 

 今回はプレミアリーグ第3節のリバプールアーセナルの一戦を振り返っていこうと思います。アルテタのサッカーが浸透し始め昨季後半から昇り調子のアーセナルと、そんなアルテタアーセナルに勝てていないリバプールリバプールファンの方も『別に負けたのなんて消化試合だし。でも、なんかちょっと嫌』ぐらいに思ってた方も多いのではないだろうか。

 

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【スタメン】嫌な感覚はあるけれど。

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 両者のスタメンはこちら。

アーセナルはビルドアップ時の鍵であるティアニーが間に合ってスタメンに。またコミュニティシールドの実績と守備の時間が長くなるであろうと読んだのか中盤はエルネニーがスタートから。前線は定番になってきた3枚。オーバメヤンリバプールの弱点の右サイド裏ブチ抜けそうだもんね。

対するリバプールは見慣れた4-3-3。ヘンダーソンとチアゴが出れないので(チアゴはコロナだそう。)ファビーニョがアンカー、CBにはリーズ戦ぶりのゴメスが先発となった。てっきりアーセナル相手に433で挑んでも崩せずカウンターを食らうという苦手意識があって4231とかにしてくるかと思ったけど、どうやらその心配は要らなかったらしい。あくまで自分たちの武器を信じて王者らしく戦おうとするリバプールである。

 

【前半】ボールを持った時どうしますか?〜リバプール編〜

 開始からボールを保持したのはリバプールの方。それはボールをリバプールが持てばCBの後ろには広大なスペースができるし、そこを狙える選手がアーセナルにはいる。逆にリバプールは敵陣深くまで攻め入ってそこでボールを失ってもすぐ取り返せればチャンスになる。アーセナルは前線の選手が数少ないチャンスを決めてくれると信頼しているからだし、リバプールはCBとGKが止めてくれると信頼しているから、リバプールがボールを持つ展開になる。

 

 だからと言って90分間ベタ引きでリバプールの攻撃をモロに受け続けるというのも左右に振られて体力の限界があるので、アーセナルは3トップを中心にミドルゾーンから『うっかりしたら取られるかもしれませんよー』という寄せをしていく。リトリートで耐える時間を出来る限り少なくしたいという思惑。

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アーセナルの寄せ

 具体的にアーセナルの寄せ方として、まず「ファビーニョに持たせない」ということが第一優先。その為に基本的にはラカゼットが消しながらCBに寄せるけど、マンマークというよりかは3トップと中盤2枚の5人で囲みましょうっていう感じ。ウィリアンとオーバメヤンリバプールIHの前を基本ポジションとして、そこから前のCBにボールが出たら寄せていく。そうやって出ていって開いたIHにはジャカやエルネニーが前にスライド。とにかくこの5人で作る五角形の中ではリバプールの選手に前を向かせないってことを意識してた。んでリバプールのSBに出た時も基本はオーバメヤンかウィリアンが寄せていく。ベジェリンとナイルズのWBはあくまでカットできそうなロングボールが出たら飛び出して、それ以外は五角形の脇のボランチとの隙間を閉じるような立ち位置。というのもビルドアップに困ったら降りてくるリバプールの前線、特にその道のプロであるフィルミーノがこのボランチの脇を狙ってくるから。前半はこの飛び出る時とスペースを消すときの使い分けが上手く出来ていて、13分のシーンなどカウンターに繋げられる場面も。リバプールは真ん中を使えない状況でSBにボールが出ても正面のWGにボール放棄覚悟での勝負か、下げるかの選択肢しかない。SBに出てからのWBの絞りはプレス時の良い取り所になっていた。エルネニーとジャカの二人は特に広大なスペースを移動しながら消していて、この五角形に出たり入ったりしてくるリバプールのIHやフィルミーノをうまく使わせなかったように思う。

 

 ということで何か工夫しないとボールを前線に運べないリバプール。で対応策としたのがGKもビルドアップに参加するという案。

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20分のシーン。GKまでボールが下がると・・・

 GKまで下げると何が起こるのか。まず、ファンダイクもしくはゴメスが開くのでSBが高い位置まで上がれる。んでアリソンとCBはそんな遠いSBにピンポイントでパスがだせちゃう人間なのでWBはそれについていくしかない、そもそもSBへのロングボールは行けるときは出ていく約束だし。ただ、一番使われたくないのはやっぱり真ん中。五角形はこれも約束通りにファビーニョを消しながら前進。となると今までWBが絞って埋めてたボランチの脇が空いてきてしまう。そこを狙ったマネが降りてボールを貰い、そのままエルネニーの背後にいるフィルミーノへ。そうしてリバプールはプレスを外していった。じゃあ、前から行かない方がいいのかとなると、先述したようにCBやGkからSB、マネやサラーへ3バックの外側のスペースにピンポイントでロングボールが出て結局プレスは剥がされてしまう。そんな局面を見せるとファビーニョが空く場面も出てきて、そうするとアーセナルはプレスを諦めリトリートへ移行する。

ただ、出来る限りリトリートで受けたくないからこそのプレス。なのでリトリートで守ろうとするとちらほら綻びが出てくる。

 

 まず、アーセナルがリトリートなのかプレスなのかを決めるのは前線の3人。前線がプレスを掛ければ、サイドからサイドに一気に振られることはないから、WBのスライドが間に合って上記のWBとボランチのところでボールが取れる、もしくはプレスのかけ方を見てインターセプトなんて事もできる。逆にリトリートと決めればボールの回収地点は低くなるけど、ラインの裏に落とされるSBからのクロスは待って対応できるし、ライン間にも3バックが果敢に出ていける。コミュニティシールドも耐えたし。

 

ただ28分リバプールの1点目の場面はアーセナルの選手間で少し意識の違いが出たところを突いた形。ラカゼットのオフサイドリバプールのリスタートからだったために、アーセナルの前線はプレスが少し緩め。リトリートでいいかなって思ったかもしれない。ただ、それとは裏腹にジャカはラカゼットの背後のファビーニョにまあまあ近づきプレスっぽい動き。なのでナイルズはそのジャカが出たポジションを埋めるために中寄りの立ち位置。ただほぼノープレッシャのファンダイクは中を牽制しておいてアーノルドへ。

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 そこでまず判断を迫られるのはナイルズで、リトリートならまず背後にいるケイタを消しておいて、アーノルドはオーバメヤンに任せればいい。そうすればパスコースはほとんど無いし、反対側にふられてもウィリアンはリトリートしてるんだから対応できる。ただこの時ナイルズはアーノルドにアタック。プレスの動きだ。確かにファンダイクからアーノルドのボールはそこまで速いものではなかったし、前線のプレスが効いていれば13分のように取れたかもしれない。ただ、ファンダイクへのプレスが効いてないためにナイルズはいつもより内側から出ていったために間に合わず、背後のケイタに出されてしまった。

 あとはもうなし崩し的に守備はずれていくもので、ダビド・ルイスの寄せは早かったもののボールは奪えず、出て行って開いたスペースにサラーが抜け出しリバプールの得点に。ファウルで止めようとしたダビド・ルイスだったが、アドバンテージを取った主審もいい判断だった。

 

 34分リバプールの二点目もファンダイクまで寄せに行ったウィリアンだったが、ファンダイクは難なく3バック脇のフィルミーノまでピンポイントパス。そこからアーノルドに戻してまた大外のロバートソンで得点。このリトリート時にロバートソンを見るのはウィリアンの役なのだが、こればっかりはあれだけプレスかけてるのにあっさり展開してしまうファンダイクがすごいの一言だし、まあ欲を言えばウィリアンがプレスかけた時点でティアニーは体の向きを外側に向けてれば処理できたかもしれないというところだろうか。あと、オーバメヤンがアーノルドにプレッシャーをかける方がウィリアンがあそこまで戻るより距離が短いかなぁ。もしくはベジェリンがマネに引っ張られずに外を見ておくとか。どちらにせよ『ウィリアン、なんか、ドンマイ。』って感じの得点であった。

 

こんな感じで決定機になった、なりそうだったのはGKを使ったビルドアップでプレスを剥がした後の速攻と、プレスかリトリートか迷った隙間を使った時。やっぱり元気な前半にセットされたリトリートを崩すのは難しい。

ということで前半はリバプールペースでした、と思いきやリバプールの2点の前に先制点を決めたのはアーセナルの方でした

【前半】ボールを持った時どうしますか?〜アーセナル編〜

 アーセナルがボールを持った時にするのは、まあいろんなところで言われている『ティアニーロール』というやつ。

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 ティアニーがサイドに開き、4バックのような形に。エルネニーとジャカが消されてる時に、ナイルズは内側に入ることで後ろからプレスに来るアーノルドが行きづらくなり、しかもアーノルドが出た裏はオーバメヤンが狙ってる仕様。ナイルズの落としをティアニーがもらう事でティアニーはフリーで前を向け、リバプールのプレスを掻い潜るということになる。

先制点はこのティアニーからオーバメヤンに当ててその落としをジャカ、さらにラカゼットに当てて、アーノルドとゴメスが出て開いたスペースに走り込んだナイルズに。そこからのクロスの処理をロバートソンがミスして失点となった。このパスワークはお見事。綺麗な崩しであった。

 

ただこの崩しが見られたのはそこまで多くなく、先制点のシーンの一個前のプレーではダビド・ルイスからナイルズへのパスミスを奪い、ワイナルドゥムのシュートまで持ち込んでいるし、やはり背後からプレッシャーを受けた中でジャカとエルネニーはボールを展開できない。

ということで前半は2-1で折り返すことに。支配率は69-32、シュート数も11-1というスタッツ。

【後半】もう少しシンプルにやりたいけれど。

 前半なかなかボールを持てない、持っても繋いでいけなかったアーセナル。プレスを受けている中で手数をかけた攻撃はミスが出やすいのは仕方がないこと。ということで後半はもう少しシンプルに

ティアニーがダビド・ルイスと同じくらいまで下がって、ナイルズのスペースを広げたり、明確にオーバメヤンとゴメスの1対1を作るのは決定期までとはいかないものの「おっ」となるシーンはいくつか作れていた。

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 前半はCBの前でポストプレーを狙うことがほとんどだったラカゼットも裏を狙うように。 さらにジャカに変えてセバージョスを入れて裏に出ていくボールの質をUPさせるアルテタ。59分と62分には立て続けにラカゼットがど真ん中を抜け出し、キーパーと一体一に。(59分はオフサイドらしいけど)しかし、どちらもアリソンが完璧な対応で失点せず。

 

そして時間が立つにつれて辛くなるのはアーセナルの前線のほう。攻撃時の上下動を激しくした一方、前線の五角形のプレスはセバージョスを入れた影響もあって少なくなり、基本リトリートで受ける形に。アーセナルは前線のエネルギー補給としてぺぺ、エンケティアを入れるものの、余計に守備の連動は失われてしまい、ファビーニョの持ち上がりを許したり、SBも高い位置を取り続けられるように。アーセナルが3枚の交代枠を使い切る一方、リバプールは「やることは変えません」といった形で、ただただ守備の緩くなったアーセナルに対してボールを保持し続けジリジリとゴールに寄っていく。

アーセナルのボールの取り所が自陣深く、攻撃もシンプルにしたが故に単発となってしまい、なかなか波状攻撃は仕掛けられない。セバージョスが一枚剥がしてスルーパスから決定期を作るもまたしてもアリソン。んでそこからカウンターで決定機を作ってしまうのだからアーセナルとしては「ぐぬぬ」って感じだろう。

残り時間が少なくなっていくにつれ無理やりでも攻めようとするアーセナル。ペペ辺りがもう少し個で違いを見せれれば変わったのかもしれないが。リバプールは冷静にミルナーおじさんとジョッタを入れてエネルギー補給。やることは変わらず、というか変える必要がない。前から来たら殴り返す、来なかったら持ち続けるという感じ。

 

87分にはGKを使いながらプレスを躱し、ゴメスがノープレッシャーで持ち上がってジョッタにロングボール一本でCKゲット。そのCKのこぼれ球が右に流れて、アーノルドのクロス、ダビド・ルイスのクリアは短く、ジョッタがボレーで流し込み移籍後デビュー戦初ゴールとなった。

フィルミーノを南野に変えてエネルギー補給してそのまま終了。3-1でリバプールが開幕3連勝となった。

【まとめ】トータルで見れば

 終わってみれば3-1の快勝とも言える結果に。もちろん1点目の失点はロバートソンのミスだが、それ以上に攻撃面で活躍していたし自分で得点までしてトータルで見ればプラスであった。んで、今季のリバプールのDFラインの裏取られる率というかミスの回数が多いと言われているが、でも結局はそれ以上に得点をとって勝っている訳で、ファンダイクやゴメスのフィードは必要だし、アーノルドは言うまでもない。ラインを高く設定すればその裏のスペースを狙われるのはわかっている事で失点する機会も増える。でもラインを高くして得られるメリットもあって、その収支がプラスだとクロップが思ってるからラインを高くしてるのであろう。個人的にはヘンダーソンが怪我+ラインは高く前から行く守備が得意、かつ攻撃時密集でも抜けられるケイタがいる、ということからかなと思っているけど。決定期を阻止したアリソンもカリウスだと勝てなかったから大金かけて獲得したわけで。

何が言いたいのかよく分からなくなってきているが、この試合は絶対的な個の優位性で勝ったという訳ではなく、あらゆる局面でのちょっとずつの差が集まって、トータルで見れば3-1だったんじゃないかという話。それは個人のスキルという面でも、チームの戦術という面でも、補強などのチーム作りという面でも。アーセナルベンゲルというサイクルが終わって、やっとアルテタのアーセナルとして成長期に入っていっている状態。補強の噂も多くあり成長のスピードは分からないが、登り調子であることは確実。対してリバプールは今が黄金期であることは確実で、ずっと長く続かないことは分かっている。ただ、今季一杯はまだリバプールが上であって欲しいなぁ。3冠狙えるシーズンだろうし。不安材料は勤続疲労と怪我かな。こればっかりはどうなるかわからない所もある。

あと地味にレスターが怖い。シティ戦を見たら結構なんでもできるチームになってた。結構ガッツリ戦い合うことになるのかもと。

 

 リバプールはこれからはヴィラ、エヴァートン、シェフィールド、ウェストハムと去年地味に苦戦した相手が続く。だからこそ南野やチアゴの”今年の変化”が如実に見える試合になるのでは。楽しみに待ちたい。

 

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それでは。

 

過去のマッチレビューなどこちら↓から。

yoru-li.hatenablog.jp

【マッチレビュー】収穫が大きいのはどちらか。〜チェルシー×リバプール 20/21プレミアリーグ第2節〜

 こんばんは、yoruです。

 

 今回は今季最初のビッグ6のマッチアップとなったチェルシー×リバプールの一戦を振り返っていこうと思います。昨季の成績はリバプールがシーズンダブル。アレクサンダー=アーノルドが大体スペシャルになる印象でしたが、今季は果たして。

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【スタメン】熟練のリバプールリバプールの右を狙うチェルシー

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両者のスタメンはこちら。

 リバプールはゴメス、マティプの二人が怪我でファビーニョがCBに入ることに。結果、アンカーはヘンダーソン、右IHにはケイタになる。 今季のチェルシーは新加入選手が多く、ランパード政権は2年目だけど繋いでいきたいのか結局ジルーさんなのかまだ何してくるかわからない感が強めなのでリバプールも自分たちのやりたい事しようという感じ。戦術的にも選手的にもあまりフレッシュ感はないけれど、その分チーム全体の熟練度の高さが十分武器になりうる。

 チェルシーは新加入選手で今のところ出場できるハフェルツとヴェルナーがスタメン。対リバプールの攻撃原則としてどのように中盤のプレスを掻い潜るかという点とファンダイク、アリソンの砦をいかにして打ち破るかが大事なポイントなのだけど、ハフェルツを真ん中にして0トップ気味に。ヘンダーソンの周りでボールを持てる人を置いて食いつかせ、そしてヴェルナーを左にしてリバプール右の裏を突こうという狙いが見えるスタメン。ドイツ代表でもやってるしね。そりゃリーズ戦を見ればアンカーから左WGへ裏一本でチャンスを作れそうなのは明白だし

 

【前半】チェルシーのデザインされたビルドアップ

「前半、どちらが良い攻撃ができてましたか?」という質問に対しては「チェルシーかな」って答えるぐらいチェルシーの攻撃はしっかりデザインしてきたものを出してたと思う。具体的には先述したリバプールの前線からのプレスをどのようにして掻い潜るかというところ。

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チェルシーのビルドアップ。コバチッチが降りてくるパターン。

 いつも通りのWG2人がSBへのパスコースを切りながらCBに寄り、フィルミーノがジョルジーニョを消しながら距離を詰めるプレスをしてくるリバプールに対して、チェルシーコバチッチ、もしくはカンテがジョルジーニョの横に降りてきて瞬間的にボランチを形成。そこからアロンソ、ジェームズのSBに出すことでSBがフリーで前を向ける状況を作っていた。特にマネに比べて守備が苦手なサラーの裏でアロンソが受ける、そのためにコバチッチが降りていくという局面は多く、前半のボールタッチ数もコバチッチ47回、カンテ27回とチェルシーは左を起点にしていた。

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アロンソにボールが渡った後。

 SBにボールが渡ってからはヴェルナーをよーいドンで裏のスペースに走らせて素直にスルーパスを出したり、ヴェルナーのマークでファビーニョが出て開いたスペースにハフェルツが流れてきてマウントの裏抜けやコバチッチ、カンテの上がりを待ったり。とにかくリバプールの厄介な前線+中盤のプレスをうまく掻い潜ってリバプールの高いラインの裏を狙うという前からプレスにくるチームに対して一番わかりやすく崩せるシーンは結構作れていた。

 

 じゃあこの2ボランチ作戦が毎回プレスを躱せていたかというとそうはいかない所がサッカーの面白いところ。

 降りていくコバチッチ、カンテに対してはケイタ、ワイナルドゥムが基本的にはついて行くわけで、見えない背後からプレスに来られるチェルシーのIHの二人はなかなか自由にやらせてもらえない、というか取られたらまずいので安易にSBへのパスを出せない感じ。ボールをもらってもGKへのパックパスで前に運べないシーンも散見された。特にコバチッチを監視してたN.ケイタはコバチッチについて行った後ジョルジーニョも近くにいるのでそのままジョルジーニョコバチッチの間に立って二人を監視できる状態に。GKからのパスがどちらに出ても獲りに行けますよというポジション取りで繋げさせなかったこともチラホラ。

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じゃあさらにチェルシーは「ケパがボールを持って後ろから繋げない時どうしますか」という問題に対しては「ハフェルツの身長を生かしてロングボールを当てます」という回答。リバプールヘンダーソンかファンダイクが対峙するんだけどこれが結構ハフェルツの勝つシーンが多く、そこからボール保持に繋がる場面も。シンプルにハフェルツすげぇって思いました。こんなに対人も強かったっけ。

 

 それでもチェルシーは前半シュート1本だけ。それはまずSBから裏にボールが出たあとのファビーニョとヴェルナーの一対一でシュートを打たせなかったこと。中にスピードを持ってゴール方向には向かせない、ビッチリくっつくということを意識してたとう感じ。外へのバックパスはOK、ゴール向いたら止めますという対応。

それとプレスが躱されたあとのリバプールの帰陣が鬼のように早く、ブロックを作った守備も普通に機能してた事。というよりチェルシーブロックを崩さないといけないのはちょっと聞いてませんけど。。。?って感じでアイディア不足感が否めなかった。特に『ハフェルツの取扱説明書〜ポゼッション編〜』はまだ読み込めていないようで、ハフェルツが降りてき過ぎちゃったり、マウントと被っちゃったりと距離感が掴めず、結局最後方のジョルジーニョさんお願いします!となってた。

【前半】”のらりくらり”なリバプール

 前半、チェルシーがやりたい事を精一杯やってきた感があるのに対してリバプールは「ああ、そんな感じですか。まあとりあえずいつも通りで」のような冷静さがあった。特に攻撃は相手の守備の出方を見て戦ってる感じであった。

 チェルシーの守備は主に中盤で5枚のブロックを作って自分の前のレーンに来たらアタックというもの。ハフェルツはリバプールのCBの間に立って相方にボールは出させないよって感じ。

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ただこの守備に対するリバプールの対処は早く、ヘンダーソンがCBの横に落ちて3バック化。ハフェルツのプレスを躱すと同時にコバチッチの前にケイタとヘンダーソンが立ち、プレスに行くかどうかを悩ませるように。

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 元々ヘンダーソンを見てたジョルジーニョは後ろの最も使わせたくないエリアにいるフィルミーノが気になって斜めには出ていけない。結果的にリバプールのCBとヘンダーソンは後ろでフリーで配球できるように。

 珍しく前からハメに行こうとした前半11分の場面はフィルミーノとワイナルドゥムがチラッと後方に顔を出すことでチェルシーの守備を一瞬迷わせ、あっさり縦パス二本で中央突破。ワイナルドゥムのシュートまで持っていき、「前から来てもいいけどどうなるか知らんよ」とチェルシーを脅す感じに。

 

 後ろから自由にパスが出せるようになったリバプールと、ずるずると下がっていってしまうチェルシー。最終ラインからのロングボールでサラーやマネにシンプルに裏を使わせたりサイドバックからのクロスで殴ろうとするものの、いまいち精度が上がらないのと、体格で勝るチェルシーの最終ラインがロングボールには強気に行けてクリアという場面が多くなかなか得点には結びつかなかった。ただ、リバプールの最終ラインのボールを見ながら目の前にいるリバプールの選手を同時に見て、スライドしたりマークについていったりという作業は相当体にも頭にも来る作業。徐々に徐々にチェルシーの後方の選手は疲弊していったように見えた。というか「これ続けてたら君ら疲れるでしょ。いつまで続くかね。」というような相手を見極めながらのビルドアップで、いつもの「スペースあったらとにかく前に放り込め!」というようなものではなかった。

 

 とこのまま後半かなぁとか思ってたら43分、ジェームズが降りていくフィルミーノにしつこくついていきそのままボール奪取、ショートカウンターを発動。左サイドからのクロスにアロンソがボックス内に進入してヘディングまでやり切る。下がりながらのヘディングは弱くアリソンがキャッチしたと思ったら束の間。アリソンからヘンダーソン、そこから一発斜めに走るマネに向けてロングボール。たまらずクリステンセンが後ろから倒し、決定期阻止で一発レッドカード。

ショートカウンターをロングカウンターで返して退場者を出させるというなんとも恐ろしいリバプール緩急の差がえげつない。さっきまでヘンダーソンがボールを持って一息してから動き出してたマネがこの瞬間はヘンダーソンにボールが入る瞬間に動き出し、ヘンダーソンも迷いなく前線に。ほんの0.数秒の違いがマネには十分だった。

 

ということで前半は0-0ながらもチェルシーが10人になってしまう結果に。

【後半】チアゴ投入で新たなテンポに。

 後半、チェルシーはハフェルツに変えてトモリ投入。ヴェルナーとマウントの2トップ気味にしてカウンター狙いに。対するリバプール、筋肉系に少し問題の出たヘンダーソンに変えて加入まもないアゴを投入。そのままアンカーに。

 チアゴバルセロナカンテラ出身、明らかにリバプールの中盤の誰よりもパスを出す判断と出すまでのスピード早い。しかも体の向きとは逆向きの方向に出したり、小さなフェイントを入れながらとにかく長短のパスを左右に散らしまくる。ということで前半よりさらに左右に揺さぶられる事になるチェルシーの3センター。

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アゴ投入後。左右にふられまくる3センター。

 必死にスライドする3センター。特に試合最後まで続けたカンテは流石の一言。が、しかしやっぱり遅れてくる場面はあるのと、前半に比べてボールの出どころがリバプールの最終ラインから一個前になったので、チアゴの丁寧なフライパスだったり短いパスでトラップに余裕ができ時間が作りやすくなってパスのテンポが上がったのもポイント。

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で結果的にサイドで3対2の数的有利の局面が増えてくる。ジョルジーニョもカバーしようとするけどそうしたらチアゴに戻してやり直し。また逆サイド。ヴェルナーも戻ってくれば3対3にの数的同数にはなるけど、ヴェルナーまで戻るとボールを獲った時に前線にマウント一人しか残ってなくてファンダイクとファビーニョに囲まれてボールロストでカウンターを打てなくなってしまう悪循環。そして前半に比べて足元でボールを貰えるマネとジェームズの1対1が増えた。リバプールの1点目はこの1対1でのジェームズのファウルで得たFKからの流れで。

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この得点の場面、FKの直後というわけではなくて、

クリアボールをアーノルドが回収→右のチアゴにパス→チアゴ反転、左ライン際のロバートソンへ→もう一回真ん中のチアゴへ→左に降りたマネに楔、ワンタッチで戻す→チアゴ右へ

っていう右→左→右って振り回して上の場面に繋がる。んでFKでヴェルナーとマウントは戻って来てるのでそれを見てカウンターの心配がないファンダイクも前線に残ってる状況。この流れのズマの動きが一番チェルシーの苦労を表してるのでもう一度ズマに注目して見てもらいたい。内側にはファンダイクとかワイナルドゥムがいるから気になるけど左右にボールが動きボールウォッチャーになってしまい、気付いたらフィルミーノがちょっと離れた位置にいて寄せるのが遅れてしまった。

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で、フィルミーノから内側に走り込んできたサラーへマイナス気味のパス、これでさらにズマは寄せられない。と思ったらフィルミーノへのリターン。フィルミーノのサラーへのパスを出す前の小さなフェイントでアロンソも振り切られ、フィルミーノはフリーで内側にクロス。またしてもジェームズの死角からビョーンと飛び出てくるマネのヘッドでリバプール先制となった。ちなみにジェームズもずっとボールウォッチャーになってしまいマネに気づかず。というかあれだけ近くで早いテンポでボールを左右に振られるとマークするべき相手とボールが同一視野に入らなくなるのできっちりマークにつくのはほぼ不可能。きっちり隠れる位置から出てきたマネと理解していたフィルミーノがお見事だった。

 

 

んで前半と同じようにというかいつも通りに前線からプレスにいくリバプールに対して、一人少ないチェルシーも前半と同様に繋いでいこうとする。ただ一人少ないのでリバプールは前からいけば絶対に人を捕まえられる上にプレス回避用のハフェルツの身長を生かしてロングボールを当てる作戦も使えない。そんな所でケパからジョルジーニョのパスをマネがかっさらって0-2。マネは自分のパスミスから失ったボールを瞬間的に攻撃から守備へと切り替えてプレスで奪っている。ちょっと小ジャンプ挟んだだけ。切り替えの速さが恐ろしい。

 

 

ということで0-2になってからはリバプールも攻勢を少し緩め「チェルシーが出てきたところを殴ります、出てこないならずっとボール持ってます」という雰囲気に。ということで一人で出て行きやすいケイタに変えてミルナー投入。チェルシーもマウントを左に持っていって441にしてチアゴをヴェルナーに見てもらおうという風に変更。それでもチアゴは左右に流れてヴェルナーをサイドに釣り出し、自分は触らず真ん中をミルナーに使ってもらうという賢さまで披露。

 ただやっぱりプレミアリーグのレベルは高い訳で。コバチッチの単機プレス突破からヴェルナーが左に流れながら裏に抜け、真ん中にドリブルしていたところをチアゴのプレスバックがファウルになりPK獲得。ただジョルジーニョのPKをアリソンが止め、これでチェルシーなんだか心がポッキリ。

振り回されて疲弊して心が折れたっぽいジョルジーニョコバチッチに変えてバークリー、エイブラハムを入れるも無理やりでもボールを運べてたコバチッチが居なくなり余計にボールは運べなくなっちゃって。リバプールはフィルミーノに変えて南野でエネルギー補給。そのまま0-2を守り切ってリバプール勝利となった。

 

 

【まとめ】

常に得るものはあったのか

 前半、チェルシーリバプールに何があっても勝ち点3を取る必要がある試合とは思ってなかったでしょう。今日の戦い方ならハフェルツよりジルーの方がポストプレーでの起点にもなるし、相手に引かれたときの崩しもマウントはジルーの方がやりやすいでしょうから。それでもハフェルツを真ん中で起用して、リバプールのプレスを剥がして、決定機までは行かなくともパターンは一つ作った。しかも無失点に抑えて前半を折り返すなんて想像以上の出来だったんじゃないかと。この試合だけではなく今後のチェルシーを見据えた采配で、ハフェルツの使い方を周りが理解してきて、それにツィエク、プリシッチ、ヴェルナーが絡んでくるようになったらチェルシーは怖い。それを狙ったランパードの采配なんではなかろうか。ハフェルツは今年21歳、マウント、プリシッチは22、チルウェル23、ヴェルナー24。間違いなくこの世代が中心となるチームに今年34のジルーは主力ではないでしょうからね。新加入が多い年の開幕2戦目、去年のチャンピオン相手に何がなんでも勝つ必要はあまりない。

 ただその分一人少なくなった後半には疑問が残る形に。10人の状態でも無理に後ろから繋ぐことで何を得られたのかと。結果的にケパの自信を失っただけなのでは。ケパも前半は目立つことなくうまくロングボールを出していたりしていただけに、10人と言えど印象的な場面に関わってしまったのは痛い。こういう時にこそジルー出してケパから放り込んでおけば将来のことと目の前の勝ち点をいいとこ取りできた可能性もあるのに。

 

あ、あとランパードは長期的なビジョンを持ってるのかもしれませんが、お金を出してるオーナーが同じビジョンを持ってるかどうかはまた別のお話。。。

熟練度が最高の武器になったリバプール

 まず、相手が10人になりチアゴを試しやすい状況ができたこと。チアゴのフィットに新加入選手通例の半年も要らなそうなことが分かったこと、そして何よりチアゴは本当に今までのリバプールになかった物を持ってることが分かったのは大きい収穫。相手が10人なので崩せてまあ当然っちゃ当然だし、チアゴのファウルも1アンカーだとこういう場面が出てくるだろうということも織り込み済みなのでこれからどんどん前線との関係が深くなっていくのが楽しみだ。

 

 それとチームの勝ちパターンの多さというかプレッシングの強度の使い分けが気になった今日。多分リバプールが本気を出せばチェルシーが恐れ慄くぐらい強度の強いプレスも出来ると思う。最終ラインがそこまでボールを持てるCBじゃないチェルシーなら尚更。ただ、それでチェルシーに引き篭もられたらそれはそれは崩すのが大変でしょう。本文でも書いたようにフィジカルでは勝てないし、カウンターもジョルジーニョ、ハフェルツ、ヴェルナーで完結できそうだし。だからある程度チェルシーにボールを持たせて引き出す。プレスも掻い潜れるんじゃないかなぐらいに思わせておく。でもCBのクオリティでシュートまでは打たせない、時間をかけさせて相手が押し込んでくるのを待つ。4-5-1のブロックを組んで耐えて隙あればロングカウンターで仕留める。ロングカウンターはサラー、マネの十八番だから。相手が引けばSBとのサイドチェンジでひたすら相手を左右に振り回して隙があれば裏に。それで相手陣内でボールを失ったらゲーゲンプレス発動でショートカウンターを狙う。じゃあ相手が前からプレスをかけてきたらそれはそれでリバプールの庭でカウンターの掛け合いじゃ負けない自信はあるわけで。相手が動けなくなってきたところをチアゴでさらに高速で振り回したり、南野入れて真ん中ぶち抜いたり、そんなオプションも増やしてるという。

 

と、ダラダラと纏まらないようなことをリバプールのブロック守備が以前より全然落ち着いて形成してたことと、前半終了間際ヘンダーソンのロングパスの時の一瞬のギラつきで感じたという話。

次節はチェルシーよりはチームとして狙いがはっきりしてるアーセナル戦。苦戦しそう。だが勝てればスタートダッシュは決めれるので勝ち点を狙いに行きたいところだ。その間のリーグカップ、南野の先発は十分にあり得るのでぜひ注目。

 

 

後半、文ばっかりになってしまった。ここまで読んでくれてありがとうございます。また次節書きますのでよろしければ是非。

それでは。