yoruの記録

雑記ブログに見せかけてほとんどサッカー(Liverpool,Dortmund)の話。

【マッチレビュー】トータルで見れば 〜リバプール×アーセナル 20/21プレミアリーグ第3節〜

全てのフットボールファンの皆さん、こんばんは、yoruです。

 

 今回はプレミアリーグ第3節のリバプールアーセナルの一戦を振り返っていこうと思います。アルテタのサッカーが浸透し始め昨季後半から昇り調子のアーセナルと、そんなアルテタアーセナルに勝てていないリバプールリバプールファンの方も『別に負けたのなんて消化試合だし。でも、なんかちょっと嫌』ぐらいに思ってた方も多いのではないだろうか。

 

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【スタメン】嫌な感覚はあるけれど。

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 両者のスタメンはこちら。

アーセナルはビルドアップ時の鍵であるティアニーが間に合ってスタメンに。またコミュニティシールドの実績と守備の時間が長くなるであろうと読んだのか中盤はエルネニーがスタートから。前線は定番になってきた3枚。オーバメヤンリバプールの弱点の右サイド裏ブチ抜けそうだもんね。

対するリバプールは見慣れた4-3-3。ヘンダーソンとチアゴが出れないので(チアゴはコロナだそう。)ファビーニョがアンカー、CBにはリーズ戦ぶりのゴメスが先発となった。てっきりアーセナル相手に433で挑んでも崩せずカウンターを食らうという苦手意識があって4231とかにしてくるかと思ったけど、どうやらその心配は要らなかったらしい。あくまで自分たちの武器を信じて王者らしく戦おうとするリバプールである。

 

【前半】ボールを持った時どうしますか?〜リバプール編〜

 開始からボールを保持したのはリバプールの方。それはボールをリバプールが持てばCBの後ろには広大なスペースができるし、そこを狙える選手がアーセナルにはいる。逆にリバプールは敵陣深くまで攻め入ってそこでボールを失ってもすぐ取り返せればチャンスになる。アーセナルは前線の選手が数少ないチャンスを決めてくれると信頼しているからだし、リバプールはCBとGKが止めてくれると信頼しているから、リバプールがボールを持つ展開になる。

 

 だからと言って90分間ベタ引きでリバプールの攻撃をモロに受け続けるというのも左右に振られて体力の限界があるので、アーセナルは3トップを中心にミドルゾーンから『うっかりしたら取られるかもしれませんよー』という寄せをしていく。リトリートで耐える時間を出来る限り少なくしたいという思惑。

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アーセナルの寄せ

 具体的にアーセナルの寄せ方として、まず「ファビーニョに持たせない」ということが第一優先。その為に基本的にはラカゼットが消しながらCBに寄せるけど、マンマークというよりかは3トップと中盤2枚の5人で囲みましょうっていう感じ。ウィリアンとオーバメヤンリバプールIHの前を基本ポジションとして、そこから前のCBにボールが出たら寄せていく。そうやって出ていって開いたIHにはジャカやエルネニーが前にスライド。とにかくこの5人で作る五角形の中ではリバプールの選手に前を向かせないってことを意識してた。んでリバプールのSBに出た時も基本はオーバメヤンかウィリアンが寄せていく。ベジェリンとナイルズのWBはあくまでカットできそうなロングボールが出たら飛び出して、それ以外は五角形の脇のボランチとの隙間を閉じるような立ち位置。というのもビルドアップに困ったら降りてくるリバプールの前線、特にその道のプロであるフィルミーノがこのボランチの脇を狙ってくるから。前半はこの飛び出る時とスペースを消すときの使い分けが上手く出来ていて、13分のシーンなどカウンターに繋げられる場面も。リバプールは真ん中を使えない状況でSBにボールが出ても正面のWGにボール放棄覚悟での勝負か、下げるかの選択肢しかない。SBに出てからのWBの絞りはプレス時の良い取り所になっていた。エルネニーとジャカの二人は特に広大なスペースを移動しながら消していて、この五角形に出たり入ったりしてくるリバプールのIHやフィルミーノをうまく使わせなかったように思う。

 

 ということで何か工夫しないとボールを前線に運べないリバプール。で対応策としたのがGKもビルドアップに参加するという案。

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20分のシーン。GKまでボールが下がると・・・

 GKまで下げると何が起こるのか。まず、ファンダイクもしくはゴメスが開くのでSBが高い位置まで上がれる。んでアリソンとCBはそんな遠いSBにピンポイントでパスがだせちゃう人間なのでWBはそれについていくしかない、そもそもSBへのロングボールは行けるときは出ていく約束だし。ただ、一番使われたくないのはやっぱり真ん中。五角形はこれも約束通りにファビーニョを消しながら前進。となると今までWBが絞って埋めてたボランチの脇が空いてきてしまう。そこを狙ったマネが降りてボールを貰い、そのままエルネニーの背後にいるフィルミーノへ。そうしてリバプールはプレスを外していった。じゃあ、前から行かない方がいいのかとなると、先述したようにCBやGkからSB、マネやサラーへ3バックの外側のスペースにピンポイントでロングボールが出て結局プレスは剥がされてしまう。そんな局面を見せるとファビーニョが空く場面も出てきて、そうするとアーセナルはプレスを諦めリトリートへ移行する。

ただ、出来る限りリトリートで受けたくないからこそのプレス。なのでリトリートで守ろうとするとちらほら綻びが出てくる。

 

 まず、アーセナルがリトリートなのかプレスなのかを決めるのは前線の3人。前線がプレスを掛ければ、サイドからサイドに一気に振られることはないから、WBのスライドが間に合って上記のWBとボランチのところでボールが取れる、もしくはプレスのかけ方を見てインターセプトなんて事もできる。逆にリトリートと決めればボールの回収地点は低くなるけど、ラインの裏に落とされるSBからのクロスは待って対応できるし、ライン間にも3バックが果敢に出ていける。コミュニティシールドも耐えたし。

 

ただ28分リバプールの1点目の場面はアーセナルの選手間で少し意識の違いが出たところを突いた形。ラカゼットのオフサイドリバプールのリスタートからだったために、アーセナルの前線はプレスが少し緩め。リトリートでいいかなって思ったかもしれない。ただ、それとは裏腹にジャカはラカゼットの背後のファビーニョにまあまあ近づきプレスっぽい動き。なのでナイルズはそのジャカが出たポジションを埋めるために中寄りの立ち位置。ただほぼノープレッシャのファンダイクは中を牽制しておいてアーノルドへ。

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 そこでまず判断を迫られるのはナイルズで、リトリートならまず背後にいるケイタを消しておいて、アーノルドはオーバメヤンに任せればいい。そうすればパスコースはほとんど無いし、反対側にふられてもウィリアンはリトリートしてるんだから対応できる。ただこの時ナイルズはアーノルドにアタック。プレスの動きだ。確かにファンダイクからアーノルドのボールはそこまで速いものではなかったし、前線のプレスが効いていれば13分のように取れたかもしれない。ただ、ファンダイクへのプレスが効いてないためにナイルズはいつもより内側から出ていったために間に合わず、背後のケイタに出されてしまった。

 あとはもうなし崩し的に守備はずれていくもので、ダビド・ルイスの寄せは早かったもののボールは奪えず、出て行って開いたスペースにサラーが抜け出しリバプールの得点に。ファウルで止めようとしたダビド・ルイスだったが、アドバンテージを取った主審もいい判断だった。

 

 34分リバプールの二点目もファンダイクまで寄せに行ったウィリアンだったが、ファンダイクは難なく3バック脇のフィルミーノまでピンポイントパス。そこからアーノルドに戻してまた大外のロバートソンで得点。このリトリート時にロバートソンを見るのはウィリアンの役なのだが、こればっかりはあれだけプレスかけてるのにあっさり展開してしまうファンダイクがすごいの一言だし、まあ欲を言えばウィリアンがプレスかけた時点でティアニーは体の向きを外側に向けてれば処理できたかもしれないというところだろうか。あと、オーバメヤンがアーノルドにプレッシャーをかける方がウィリアンがあそこまで戻るより距離が短いかなぁ。もしくはベジェリンがマネに引っ張られずに外を見ておくとか。どちらにせよ『ウィリアン、なんか、ドンマイ。』って感じの得点であった。

 

こんな感じで決定機になった、なりそうだったのはGKを使ったビルドアップでプレスを剥がした後の速攻と、プレスかリトリートか迷った隙間を使った時。やっぱり元気な前半にセットされたリトリートを崩すのは難しい。

ということで前半はリバプールペースでした、と思いきやリバプールの2点の前に先制点を決めたのはアーセナルの方でした

【前半】ボールを持った時どうしますか?〜アーセナル編〜

 アーセナルがボールを持った時にするのは、まあいろんなところで言われている『ティアニーロール』というやつ。

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 ティアニーがサイドに開き、4バックのような形に。エルネニーとジャカが消されてる時に、ナイルズは内側に入ることで後ろからプレスに来るアーノルドが行きづらくなり、しかもアーノルドが出た裏はオーバメヤンが狙ってる仕様。ナイルズの落としをティアニーがもらう事でティアニーはフリーで前を向け、リバプールのプレスを掻い潜るということになる。

先制点はこのティアニーからオーバメヤンに当ててその落としをジャカ、さらにラカゼットに当てて、アーノルドとゴメスが出て開いたスペースに走り込んだナイルズに。そこからのクロスの処理をロバートソンがミスして失点となった。このパスワークはお見事。綺麗な崩しであった。

 

ただこの崩しが見られたのはそこまで多くなく、先制点のシーンの一個前のプレーではダビド・ルイスからナイルズへのパスミスを奪い、ワイナルドゥムのシュートまで持ち込んでいるし、やはり背後からプレッシャーを受けた中でジャカとエルネニーはボールを展開できない。

ということで前半は2-1で折り返すことに。支配率は69-32、シュート数も11-1というスタッツ。

【後半】もう少しシンプルにやりたいけれど。

 前半なかなかボールを持てない、持っても繋いでいけなかったアーセナル。プレスを受けている中で手数をかけた攻撃はミスが出やすいのは仕方がないこと。ということで後半はもう少しシンプルに

ティアニーがダビド・ルイスと同じくらいまで下がって、ナイルズのスペースを広げたり、明確にオーバメヤンとゴメスの1対1を作るのは決定期までとはいかないものの「おっ」となるシーンはいくつか作れていた。

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 前半はCBの前でポストプレーを狙うことがほとんどだったラカゼットも裏を狙うように。 さらにジャカに変えてセバージョスを入れて裏に出ていくボールの質をUPさせるアルテタ。59分と62分には立て続けにラカゼットがど真ん中を抜け出し、キーパーと一体一に。(59分はオフサイドらしいけど)しかし、どちらもアリソンが完璧な対応で失点せず。

 

そして時間が立つにつれて辛くなるのはアーセナルの前線のほう。攻撃時の上下動を激しくした一方、前線の五角形のプレスはセバージョスを入れた影響もあって少なくなり、基本リトリートで受ける形に。アーセナルは前線のエネルギー補給としてぺぺ、エンケティアを入れるものの、余計に守備の連動は失われてしまい、ファビーニョの持ち上がりを許したり、SBも高い位置を取り続けられるように。アーセナルが3枚の交代枠を使い切る一方、リバプールは「やることは変えません」といった形で、ただただ守備の緩くなったアーセナルに対してボールを保持し続けジリジリとゴールに寄っていく。

アーセナルのボールの取り所が自陣深く、攻撃もシンプルにしたが故に単発となってしまい、なかなか波状攻撃は仕掛けられない。セバージョスが一枚剥がしてスルーパスから決定期を作るもまたしてもアリソン。んでそこからカウンターで決定機を作ってしまうのだからアーセナルとしては「ぐぬぬ」って感じだろう。

残り時間が少なくなっていくにつれ無理やりでも攻めようとするアーセナル。ペペ辺りがもう少し個で違いを見せれれば変わったのかもしれないが。リバプールは冷静にミルナーおじさんとジョッタを入れてエネルギー補給。やることは変わらず、というか変える必要がない。前から来たら殴り返す、来なかったら持ち続けるという感じ。

 

87分にはGKを使いながらプレスを躱し、ゴメスがノープレッシャーで持ち上がってジョッタにロングボール一本でCKゲット。そのCKのこぼれ球が右に流れて、アーノルドのクロス、ダビド・ルイスのクリアは短く、ジョッタがボレーで流し込み移籍後デビュー戦初ゴールとなった。

フィルミーノを南野に変えてエネルギー補給してそのまま終了。3-1でリバプールが開幕3連勝となった。

【まとめ】トータルで見れば

 終わってみれば3-1の快勝とも言える結果に。もちろん1点目の失点はロバートソンのミスだが、それ以上に攻撃面で活躍していたし自分で得点までしてトータルで見ればプラスであった。んで、今季のリバプールのDFラインの裏取られる率というかミスの回数が多いと言われているが、でも結局はそれ以上に得点をとって勝っている訳で、ファンダイクやゴメスのフィードは必要だし、アーノルドは言うまでもない。ラインを高く設定すればその裏のスペースを狙われるのはわかっている事で失点する機会も増える。でもラインを高くして得られるメリットもあって、その収支がプラスだとクロップが思ってるからラインを高くしてるのであろう。個人的にはヘンダーソンが怪我+ラインは高く前から行く守備が得意、かつ攻撃時密集でも抜けられるケイタがいる、ということからかなと思っているけど。決定期を阻止したアリソンもカリウスだと勝てなかったから大金かけて獲得したわけで。

何が言いたいのかよく分からなくなってきているが、この試合は絶対的な個の優位性で勝ったという訳ではなく、あらゆる局面でのちょっとずつの差が集まって、トータルで見れば3-1だったんじゃないかという話。それは個人のスキルという面でも、チームの戦術という面でも、補強などのチーム作りという面でも。アーセナルベンゲルというサイクルが終わって、やっとアルテタのアーセナルとして成長期に入っていっている状態。補強の噂も多くあり成長のスピードは分からないが、登り調子であることは確実。対してリバプールは今が黄金期であることは確実で、ずっと長く続かないことは分かっている。ただ、今季一杯はまだリバプールが上であって欲しいなぁ。3冠狙えるシーズンだろうし。不安材料は勤続疲労と怪我かな。こればっかりはどうなるかわからない所もある。

あと地味にレスターが怖い。シティ戦を見たら結構なんでもできるチームになってた。結構ガッツリ戦い合うことになるのかもと。

 

 リバプールはこれからはヴィラ、エヴァートン、シェフィールド、ウェストハムと去年地味に苦戦した相手が続く。だからこそ南野やチアゴの”今年の変化”が如実に見える試合になるのでは。楽しみに待ちたい。

 

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それでは。

 

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