yoruの記録

雑記ブログに見せかけてほとんどサッカー(Liverpool,Dortmund)の話。

【マッチレビュー】収穫が大きいのはどちらか。〜チェルシー×リバプール 20/21プレミアリーグ第2節〜

 こんばんは、yoruです。

 

 今回は今季最初のビッグ6のマッチアップとなったチェルシー×リバプールの一戦を振り返っていこうと思います。昨季の成績はリバプールがシーズンダブル。アレクサンダー=アーノルドが大体スペシャルになる印象でしたが、今季は果たして。

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【スタメン】熟練のリバプールリバプールの右を狙うチェルシー

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両者のスタメンはこちら。

 リバプールはゴメス、マティプの二人が怪我でファビーニョがCBに入ることに。結果、アンカーはヘンダーソン、右IHにはケイタになる。 今季のチェルシーは新加入選手が多く、ランパード政権は2年目だけど繋いでいきたいのか結局ジルーさんなのかまだ何してくるかわからない感が強めなのでリバプールも自分たちのやりたい事しようという感じ。戦術的にも選手的にもあまりフレッシュ感はないけれど、その分チーム全体の熟練度の高さが十分武器になりうる。

 チェルシーは新加入選手で今のところ出場できるハフェルツとヴェルナーがスタメン。対リバプールの攻撃原則としてどのように中盤のプレスを掻い潜るかという点とファンダイク、アリソンの砦をいかにして打ち破るかが大事なポイントなのだけど、ハフェルツを真ん中にして0トップ気味に。ヘンダーソンの周りでボールを持てる人を置いて食いつかせ、そしてヴェルナーを左にしてリバプール右の裏を突こうという狙いが見えるスタメン。ドイツ代表でもやってるしね。そりゃリーズ戦を見ればアンカーから左WGへ裏一本でチャンスを作れそうなのは明白だし

 

【前半】チェルシーのデザインされたビルドアップ

「前半、どちらが良い攻撃ができてましたか?」という質問に対しては「チェルシーかな」って答えるぐらいチェルシーの攻撃はしっかりデザインしてきたものを出してたと思う。具体的には先述したリバプールの前線からのプレスをどのようにして掻い潜るかというところ。

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チェルシーのビルドアップ。コバチッチが降りてくるパターン。

 いつも通りのWG2人がSBへのパスコースを切りながらCBに寄り、フィルミーノがジョルジーニョを消しながら距離を詰めるプレスをしてくるリバプールに対して、チェルシーコバチッチ、もしくはカンテがジョルジーニョの横に降りてきて瞬間的にボランチを形成。そこからアロンソ、ジェームズのSBに出すことでSBがフリーで前を向ける状況を作っていた。特にマネに比べて守備が苦手なサラーの裏でアロンソが受ける、そのためにコバチッチが降りていくという局面は多く、前半のボールタッチ数もコバチッチ47回、カンテ27回とチェルシーは左を起点にしていた。

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アロンソにボールが渡った後。

 SBにボールが渡ってからはヴェルナーをよーいドンで裏のスペースに走らせて素直にスルーパスを出したり、ヴェルナーのマークでファビーニョが出て開いたスペースにハフェルツが流れてきてマウントの裏抜けやコバチッチ、カンテの上がりを待ったり。とにかくリバプールの厄介な前線+中盤のプレスをうまく掻い潜ってリバプールの高いラインの裏を狙うという前からプレスにくるチームに対して一番わかりやすく崩せるシーンは結構作れていた。

 

 じゃあこの2ボランチ作戦が毎回プレスを躱せていたかというとそうはいかない所がサッカーの面白いところ。

 降りていくコバチッチ、カンテに対してはケイタ、ワイナルドゥムが基本的にはついて行くわけで、見えない背後からプレスに来られるチェルシーのIHの二人はなかなか自由にやらせてもらえない、というか取られたらまずいので安易にSBへのパスを出せない感じ。ボールをもらってもGKへのパックパスで前に運べないシーンも散見された。特にコバチッチを監視してたN.ケイタはコバチッチについて行った後ジョルジーニョも近くにいるのでそのままジョルジーニョコバチッチの間に立って二人を監視できる状態に。GKからのパスがどちらに出ても獲りに行けますよというポジション取りで繋げさせなかったこともチラホラ。

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じゃあさらにチェルシーは「ケパがボールを持って後ろから繋げない時どうしますか」という問題に対しては「ハフェルツの身長を生かしてロングボールを当てます」という回答。リバプールヘンダーソンかファンダイクが対峙するんだけどこれが結構ハフェルツの勝つシーンが多く、そこからボール保持に繋がる場面も。シンプルにハフェルツすげぇって思いました。こんなに対人も強かったっけ。

 

 それでもチェルシーは前半シュート1本だけ。それはまずSBから裏にボールが出たあとのファビーニョとヴェルナーの一対一でシュートを打たせなかったこと。中にスピードを持ってゴール方向には向かせない、ビッチリくっつくということを意識してたとう感じ。外へのバックパスはOK、ゴール向いたら止めますという対応。

それとプレスが躱されたあとのリバプールの帰陣が鬼のように早く、ブロックを作った守備も普通に機能してた事。というよりチェルシーブロックを崩さないといけないのはちょっと聞いてませんけど。。。?って感じでアイディア不足感が否めなかった。特に『ハフェルツの取扱説明書〜ポゼッション編〜』はまだ読み込めていないようで、ハフェルツが降りてき過ぎちゃったり、マウントと被っちゃったりと距離感が掴めず、結局最後方のジョルジーニョさんお願いします!となってた。

【前半】”のらりくらり”なリバプール

 前半、チェルシーがやりたい事を精一杯やってきた感があるのに対してリバプールは「ああ、そんな感じですか。まあとりあえずいつも通りで」のような冷静さがあった。特に攻撃は相手の守備の出方を見て戦ってる感じであった。

 チェルシーの守備は主に中盤で5枚のブロックを作って自分の前のレーンに来たらアタックというもの。ハフェルツはリバプールのCBの間に立って相方にボールは出させないよって感じ。

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ただこの守備に対するリバプールの対処は早く、ヘンダーソンがCBの横に落ちて3バック化。ハフェルツのプレスを躱すと同時にコバチッチの前にケイタとヘンダーソンが立ち、プレスに行くかどうかを悩ませるように。

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 元々ヘンダーソンを見てたジョルジーニョは後ろの最も使わせたくないエリアにいるフィルミーノが気になって斜めには出ていけない。結果的にリバプールのCBとヘンダーソンは後ろでフリーで配球できるように。

 珍しく前からハメに行こうとした前半11分の場面はフィルミーノとワイナルドゥムがチラッと後方に顔を出すことでチェルシーの守備を一瞬迷わせ、あっさり縦パス二本で中央突破。ワイナルドゥムのシュートまで持っていき、「前から来てもいいけどどうなるか知らんよ」とチェルシーを脅す感じに。

 

 後ろから自由にパスが出せるようになったリバプールと、ずるずると下がっていってしまうチェルシー。最終ラインからのロングボールでサラーやマネにシンプルに裏を使わせたりサイドバックからのクロスで殴ろうとするものの、いまいち精度が上がらないのと、体格で勝るチェルシーの最終ラインがロングボールには強気に行けてクリアという場面が多くなかなか得点には結びつかなかった。ただ、リバプールの最終ラインのボールを見ながら目の前にいるリバプールの選手を同時に見て、スライドしたりマークについていったりという作業は相当体にも頭にも来る作業。徐々に徐々にチェルシーの後方の選手は疲弊していったように見えた。というか「これ続けてたら君ら疲れるでしょ。いつまで続くかね。」というような相手を見極めながらのビルドアップで、いつもの「スペースあったらとにかく前に放り込め!」というようなものではなかった。

 

 とこのまま後半かなぁとか思ってたら43分、ジェームズが降りていくフィルミーノにしつこくついていきそのままボール奪取、ショートカウンターを発動。左サイドからのクロスにアロンソがボックス内に進入してヘディングまでやり切る。下がりながらのヘディングは弱くアリソンがキャッチしたと思ったら束の間。アリソンからヘンダーソン、そこから一発斜めに走るマネに向けてロングボール。たまらずクリステンセンが後ろから倒し、決定期阻止で一発レッドカード。

ショートカウンターをロングカウンターで返して退場者を出させるというなんとも恐ろしいリバプール緩急の差がえげつない。さっきまでヘンダーソンがボールを持って一息してから動き出してたマネがこの瞬間はヘンダーソンにボールが入る瞬間に動き出し、ヘンダーソンも迷いなく前線に。ほんの0.数秒の違いがマネには十分だった。

 

ということで前半は0-0ながらもチェルシーが10人になってしまう結果に。

【後半】チアゴ投入で新たなテンポに。

 後半、チェルシーはハフェルツに変えてトモリ投入。ヴェルナーとマウントの2トップ気味にしてカウンター狙いに。対するリバプール、筋肉系に少し問題の出たヘンダーソンに変えて加入まもないアゴを投入。そのままアンカーに。

 チアゴバルセロナカンテラ出身、明らかにリバプールの中盤の誰よりもパスを出す判断と出すまでのスピード早い。しかも体の向きとは逆向きの方向に出したり、小さなフェイントを入れながらとにかく長短のパスを左右に散らしまくる。ということで前半よりさらに左右に揺さぶられる事になるチェルシーの3センター。

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アゴ投入後。左右にふられまくる3センター。

 必死にスライドする3センター。特に試合最後まで続けたカンテは流石の一言。が、しかしやっぱり遅れてくる場面はあるのと、前半に比べてボールの出どころがリバプールの最終ラインから一個前になったので、チアゴの丁寧なフライパスだったり短いパスでトラップに余裕ができ時間が作りやすくなってパスのテンポが上がったのもポイント。

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で結果的にサイドで3対2の数的有利の局面が増えてくる。ジョルジーニョもカバーしようとするけどそうしたらチアゴに戻してやり直し。また逆サイド。ヴェルナーも戻ってくれば3対3にの数的同数にはなるけど、ヴェルナーまで戻るとボールを獲った時に前線にマウント一人しか残ってなくてファンダイクとファビーニョに囲まれてボールロストでカウンターを打てなくなってしまう悪循環。そして前半に比べて足元でボールを貰えるマネとジェームズの1対1が増えた。リバプールの1点目はこの1対1でのジェームズのファウルで得たFKからの流れで。

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この得点の場面、FKの直後というわけではなくて、

クリアボールをアーノルドが回収→右のチアゴにパス→チアゴ反転、左ライン際のロバートソンへ→もう一回真ん中のチアゴへ→左に降りたマネに楔、ワンタッチで戻す→チアゴ右へ

っていう右→左→右って振り回して上の場面に繋がる。んでFKでヴェルナーとマウントは戻って来てるのでそれを見てカウンターの心配がないファンダイクも前線に残ってる状況。この流れのズマの動きが一番チェルシーの苦労を表してるのでもう一度ズマに注目して見てもらいたい。内側にはファンダイクとかワイナルドゥムがいるから気になるけど左右にボールが動きボールウォッチャーになってしまい、気付いたらフィルミーノがちょっと離れた位置にいて寄せるのが遅れてしまった。

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で、フィルミーノから内側に走り込んできたサラーへマイナス気味のパス、これでさらにズマは寄せられない。と思ったらフィルミーノへのリターン。フィルミーノのサラーへのパスを出す前の小さなフェイントでアロンソも振り切られ、フィルミーノはフリーで内側にクロス。またしてもジェームズの死角からビョーンと飛び出てくるマネのヘッドでリバプール先制となった。ちなみにジェームズもずっとボールウォッチャーになってしまいマネに気づかず。というかあれだけ近くで早いテンポでボールを左右に振られるとマークするべき相手とボールが同一視野に入らなくなるのできっちりマークにつくのはほぼ不可能。きっちり隠れる位置から出てきたマネと理解していたフィルミーノがお見事だった。

 

 

んで前半と同じようにというかいつも通りに前線からプレスにいくリバプールに対して、一人少ないチェルシーも前半と同様に繋いでいこうとする。ただ一人少ないのでリバプールは前からいけば絶対に人を捕まえられる上にプレス回避用のハフェルツの身長を生かしてロングボールを当てる作戦も使えない。そんな所でケパからジョルジーニョのパスをマネがかっさらって0-2。マネは自分のパスミスから失ったボールを瞬間的に攻撃から守備へと切り替えてプレスで奪っている。ちょっと小ジャンプ挟んだだけ。切り替えの速さが恐ろしい。

 

 

ということで0-2になってからはリバプールも攻勢を少し緩め「チェルシーが出てきたところを殴ります、出てこないならずっとボール持ってます」という雰囲気に。ということで一人で出て行きやすいケイタに変えてミルナー投入。チェルシーもマウントを左に持っていって441にしてチアゴをヴェルナーに見てもらおうという風に変更。それでもチアゴは左右に流れてヴェルナーをサイドに釣り出し、自分は触らず真ん中をミルナーに使ってもらうという賢さまで披露。

 ただやっぱりプレミアリーグのレベルは高い訳で。コバチッチの単機プレス突破からヴェルナーが左に流れながら裏に抜け、真ん中にドリブルしていたところをチアゴのプレスバックがファウルになりPK獲得。ただジョルジーニョのPKをアリソンが止め、これでチェルシーなんだか心がポッキリ。

振り回されて疲弊して心が折れたっぽいジョルジーニョコバチッチに変えてバークリー、エイブラハムを入れるも無理やりでもボールを運べてたコバチッチが居なくなり余計にボールは運べなくなっちゃって。リバプールはフィルミーノに変えて南野でエネルギー補給。そのまま0-2を守り切ってリバプール勝利となった。

 

 

【まとめ】

常に得るものはあったのか

 前半、チェルシーリバプールに何があっても勝ち点3を取る必要がある試合とは思ってなかったでしょう。今日の戦い方ならハフェルツよりジルーの方がポストプレーでの起点にもなるし、相手に引かれたときの崩しもマウントはジルーの方がやりやすいでしょうから。それでもハフェルツを真ん中で起用して、リバプールのプレスを剥がして、決定機までは行かなくともパターンは一つ作った。しかも無失点に抑えて前半を折り返すなんて想像以上の出来だったんじゃないかと。この試合だけではなく今後のチェルシーを見据えた采配で、ハフェルツの使い方を周りが理解してきて、それにツィエク、プリシッチ、ヴェルナーが絡んでくるようになったらチェルシーは怖い。それを狙ったランパードの采配なんではなかろうか。ハフェルツは今年21歳、マウント、プリシッチは22、チルウェル23、ヴェルナー24。間違いなくこの世代が中心となるチームに今年34のジルーは主力ではないでしょうからね。新加入が多い年の開幕2戦目、去年のチャンピオン相手に何がなんでも勝つ必要はあまりない。

 ただその分一人少なくなった後半には疑問が残る形に。10人の状態でも無理に後ろから繋ぐことで何を得られたのかと。結果的にケパの自信を失っただけなのでは。ケパも前半は目立つことなくうまくロングボールを出していたりしていただけに、10人と言えど印象的な場面に関わってしまったのは痛い。こういう時にこそジルー出してケパから放り込んでおけば将来のことと目の前の勝ち点をいいとこ取りできた可能性もあるのに。

 

あ、あとランパードは長期的なビジョンを持ってるのかもしれませんが、お金を出してるオーナーが同じビジョンを持ってるかどうかはまた別のお話。。。

熟練度が最高の武器になったリバプール

 まず、相手が10人になりチアゴを試しやすい状況ができたこと。チアゴのフィットに新加入選手通例の半年も要らなそうなことが分かったこと、そして何よりチアゴは本当に今までのリバプールになかった物を持ってることが分かったのは大きい収穫。相手が10人なので崩せてまあ当然っちゃ当然だし、チアゴのファウルも1アンカーだとこういう場面が出てくるだろうということも織り込み済みなのでこれからどんどん前線との関係が深くなっていくのが楽しみだ。

 

 それとチームの勝ちパターンの多さというかプレッシングの強度の使い分けが気になった今日。多分リバプールが本気を出せばチェルシーが恐れ慄くぐらい強度の強いプレスも出来ると思う。最終ラインがそこまでボールを持てるCBじゃないチェルシーなら尚更。ただ、それでチェルシーに引き篭もられたらそれはそれは崩すのが大変でしょう。本文でも書いたようにフィジカルでは勝てないし、カウンターもジョルジーニョ、ハフェルツ、ヴェルナーで完結できそうだし。だからある程度チェルシーにボールを持たせて引き出す。プレスも掻い潜れるんじゃないかなぐらいに思わせておく。でもCBのクオリティでシュートまでは打たせない、時間をかけさせて相手が押し込んでくるのを待つ。4-5-1のブロックを組んで耐えて隙あればロングカウンターで仕留める。ロングカウンターはサラー、マネの十八番だから。相手が引けばSBとのサイドチェンジでひたすら相手を左右に振り回して隙があれば裏に。それで相手陣内でボールを失ったらゲーゲンプレス発動でショートカウンターを狙う。じゃあ相手が前からプレスをかけてきたらそれはそれでリバプールの庭でカウンターの掛け合いじゃ負けない自信はあるわけで。相手が動けなくなってきたところをチアゴでさらに高速で振り回したり、南野入れて真ん中ぶち抜いたり、そんなオプションも増やしてるという。

 

と、ダラダラと纏まらないようなことをリバプールのブロック守備が以前より全然落ち着いて形成してたことと、前半終了間際ヘンダーソンのロングパスの時の一瞬のギラつきで感じたという話。

次節はチェルシーよりはチームとして狙いがはっきりしてるアーセナル戦。苦戦しそう。だが勝てればスタートダッシュは決めれるので勝ち点を狙いに行きたいところだ。その間のリーグカップ、南野の先発は十分にあり得るのでぜひ注目。

 

 

後半、文ばっかりになってしまった。ここまで読んでくれてありがとうございます。また次節書きますのでよろしければ是非。

それでは。