yoruの記録

雑記ブログに見せかけてほとんどサッカー(Liverpool,Dortmund)の話。

21/22 ドルトムントシーズン総括 チーム編

 こんばんは、yoruです。

 大変お久しぶりです。社畜をしていたらいつの間にかシーズンが終わり、なんなら7月も終わろうとしています。夏です。

 

ということで貯めに貯め続けたドルトムントの21/22シーズン総括です。

去年と同じくチーム編、選手編(GK,DF)(MF,FW)の3本立てです。22/23シーズンが始まる前に「あーこんなシーズンだったなぁ」的な感覚でお読みください。

 

移籍関係

IN

・Donyell Malen (30.0m€)

・Gregor Kobel (15.0m€)

・Marin Pongracic (Loan)

・Marius Wolf (Loan back)

 

OUT

・Jadon Sancho (85.0m€)

・Leonardo Balerdi (11.0m€)

・Thomas Delaney (6.0m€)

・Jeremy Toljan (3.5m€)

・Sergio Gómez (2.25m€)

・Lukasz Piszczek (Retired)

・Tobias Raschl (100k€)*

・Ansgar Knauff (Loan)*

*は冬の移籍

 

 前年度、動き出すのが明らかに遅い上に要求額もはっきり伝えているのに「そこをなんとか...!!!」と歴史と伝統はどこに行ったのかというムーブで獲得に失敗したユナイテッドが今季はきっちりお金を持ってきたのでサンチョを放出。8500万ユーロを置いていってくれた。

 その大金で獲得したのは明らかに補強ポジションであったGKとサンチョの穴を埋めるアタッカー。この2点に関してはスムーズに補強できたと言っていいだろう。

 他にも「いや!!ムニエの代わりを!!」とか「CB足りてますか?!?!?」というような声に対しては「探したけどいませんでした。」という報告とともにヴォルフスブルクからポングラチッチをレンタル。それにムキっとして帰ってきたヴォルフ*1を戻して獲得は終了。

 

 あとやっぱり無観客による収入減が厳しくディレイニーやレンタルでチームにいなかった選手を放出することで小銭を集めた。ちなみにBalerdiはドルトムントで7試合しか出ていないが1100万€で放出しており、「フロントやるやん」と思うかもしれないが、1550万€で獲得しているため赤字である。

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前半戦は出場していたものの、徐々に序列を落とし今季は17試合の出場だった。まだ22歳。頑張っていただきたい。

 

なんかクビになっちゃったけどマルコ・ローゼを振り返ろう

 さて、ドルトムントの21/22シーズンはボルシア•メンヒェングラートバッハから強奪契約解除金を支払って獲得したマルコローゼ監督の元で始まった。で、結果としては

ブンデスリーガ 2位

・ポカール杯 ベスト16

・CL グループステージ敗退→ELプレーオフ敗退

であり、1シーズンでクビになった訳だが*2どのようなシーズンだったのか。なぜマルコ・ローゼは一年でいなくなってしまったのかを考察していきましょう。

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いやぁ書き始めたらクビになってびっくりしたよね。何のために書くかがね。モチベーションがね。

 

そもそもなんでマルコ・ローゼを獲得したの?

         

 要するにクラブとして”数年単位で”継続して戦う術を持ち込みたいが故のマルコローゼ獲得だったのである。

 ドルトムントは高校の部活のように毎年毎年主力が入れ替わり、若い選手が入ってくるというサイクルが前提にあるクラブであるが、「それじゃあ積み上げたものもなくなっちゃうやんけ!!!毎年、毎年、一緒や!いい才能がいても!」と、「そらそやろ」という事に気づいたフロントはタイトルを狙えるよう一貫した考えを持つ監督を、という事で白羽の矢が立ったのがBMGを率いていたマルコローゼ監督。

 現役時代はマインツでクロップとトゥヘルの下でプレー。指導者となってからはラングニックにザルツブルクに呼ばれ、トップチームでリーグ2連覇。その後はBMGにステップアップしリーグ4位、CLグループステージ突破と、経歴も成績も弊社にピッタリ!となり獲得に至った。

 

で、じゃあドルトムントに根付かせようとした戦い方なんやねんという話であるが、基本的にはザルツブルク時代から継続しているゲーゲンプレッシングと、一方でボール保持も諦めず、前線のフィジカルを活かしつつSBの幅を使いながらゴールに迫っていくというポゼッション戦術が手札。良い意味で現代的なサッカーを浸透させるのに長けた指導者であった。

 

なぜマルコ・ローゼはいなくなったのか①

失点が多すぎる。

いや、多すぎるでしょ。リーグ戦52失点って。得点が多く入りがちなブンデスリーガとは言っても、毎年優勝しているミュンヘンの赤いチームは大体20~30点くらいを推移しているのでやはり弊社は多い。

 ではなぜ失点が多いのかという話だが、

 

1)プレスがはまらない。

 ローゼの肝である相手陣内からのプレッシングは、アヤックスライプツィヒなどしっかりビルドアップに取り組んでいるチーム相手には全くハマらなかった。

 今季序盤にこだわった2トップは相手のCBを監視し、さらにトップ下が相手のアンカーを監視して中央のパスコースを封鎖しようというもの。結果、相手がサイドから中央にボールを運ぼうとするタイミングで中盤3枚で数的優位を作って奪って一気に前線6枚でカウンターだ!というアゲアゲ設計図だったわけだが、これとんでもなく中盤3枚の運動量が求められるのである。

 で、これに応えられたのはベリンガムだけでしたという話。それに相手の10番がサイドに流れたりするとボールは中央に来ないし、そもそもサイドで数的不利じゃんね、っていう事も起こりはじめ崩壊。徐々にローゼ印の4-3-1-2ハイプレッシングは鳴りを潜め、結果シーズン後半戦には4-2-3-1や4-5-1で4-4-2のプレスをまったりとしていたのでした。

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序盤は3センターやってたブラント。守備に走らされまくり厳しいものがあった。

 

2)DFの足が遅い。

 前線からプレスに行くので当然最終ラインは高い位置を取るわけだが、プレスがはまらないから毎回疑似カウンターを食らっている。で、悲しいことに我DFラインは揃いも揃って足が速くない。*3というか早いはずのザガドゥとかアカンジとかは対応が普通にまずいし。足が速くてフィジカルが強いだけの人になっている。守備をしてくれ。なのでカウンターが上手いチームと対戦すると息をするようにDFラインが晒され失点していく。

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ヴィルツとシックのコンビ、あれはずるい。

という事でフンメルスさんはカウンターに追いつけないのである。これはもう仕方がないことで、ここからフンメルスさんに脚を速くしてくれとお願いするのも無理な話なのでフンメルスさんを使わざるを得ない以下の現状を改善するしかない。

 

3)プレスを掻い潜れない。

 各々が適切なポジションを取ると、相手は認知が難しくなるし、ボールを奪われたとしても守備もいい距離間で行えますよっていうのが現代サッカーの原則的な部分である。さらにプレスを受けているような状況では無理せず蹴っ飛ばすか、GK含めたプレイヤー全員が統一したビジョンを持って自分のマークを外したり、あえてマークを受けたり、ラインを下げたり上げたりと上記の原則を使いパスを回せる距離感を保ちながら、チーム全員が連動してプレスを剥がしていくというのが主な手段である。しかし弊社のビルドアップは非常にいびつ。

 まず、最終ラインが同数のプレスを受けている場面でサポートが少ない。アンカーやボランチはあまり自分の持ち場を動かないし、SBも最終ラインをほっておいて上がろうとする。サポートが少ないからCBもなかなか広がらず狭い距離間でのパス交換を始めるから奪われる確率が多い。つまりチーム全体が連動せず、目の前のプレスに来ている相手でせいいっぱいになってしまっている。最終ラインが目の前の相手でいっぱいいっぱいになっているような状況ではリスク管理もできていないし、自陣ゴール近くでボールを持っているデメリットばかり露出する。

 今季はこのようなプレスを受けた状況では「無理してつなごうとせずホーランに蹴っ飛ばす」というもう一つの解決策も見られたが、ホーランが離脱すると打つ手なし。結果対面の相手を苦にしないフンメルスやロイスがきっかけを作ることで何とかプレスを掻い潜ろうとしていた。

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ビルドアップは今でもべらぼうに上手い。FW1人にCB2人見させるみたいなチーム相手だとほぼ無敵。足は遅い。

という事でプレスを掻い潜れない→ボールを奪われる→プレスはハマらない→足が速くないDFが晒される、とスパイラルに陥り失点を重ねていった。

 

なぜマルコ・ローゼはいなくなったのか②

属人性が高い。

 将来有望なタレントがいるのは大変に結構だが、上記のようにビルドアップやプレスがチームとして整備されていない状況でも個人の上手さで何とかできちゃうというのがまずい。下地としてチーム全体が整備された上に個人の能力が乗っかってくるというのが理想的なチームで、ドルトムントは逆なのだ。

 プレスが回避できなくてもフンメルスが何とかパス通せちゃったり、一気に最終ラインの裏に落とすボールを蹴れたり、それに競り勝てるホーランが居たり、狭い中でも前を向けるロイスが居たりしてるおかげで何とかそれっぽく勝てている。

 

これは今季の各チームのxGと実際のゴールをグラフに示したもの。

y=xの点線がちょうどxGとゴール数が同じ場所なので、この点線より上にあればxGより実際のゴールが多い(つまり運よく決まっていたり、シュートが上手い)、下にあればxGより実際のゴールが少ない(運が悪い、相手のGKがすごい、シュートが下手)という事である。

で、ドルトムントは結構ぶっちぎって上にブレている。これはドルトムントの選手がべらぼうにシュートが上手いという事でもあるが、どちらかというとチャンスの質は悪いのに個人で何とか決めているという事でもある。

ドルトムントより得点が多いバイエルンだが、xGは得点より多い99.9であり期待値的にはもっと多く得点を決めていてもおかしくない。*4ドルトムントは期待値と得点の差が+19.35でありブンデス1位。*5

個人の成績で見てもホーランとブラントがそれぞれ5点、4点ずつ点ずつ上ブレており、思い返してみてもこの2人は難しいシュートを決めちゃきたことが思い出されるのではないだろうか。

 

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ホーランが点を取ったデアクラシカー、全敗である。

 

決して期待値が全てでは無いし、すごいシュートが出るのは見ていて楽しいというのもある。中でもドルトムントは期待値より10点以上得点を取ることが珍しくないクラブなのでそこまで悲観することはないが、ローゼ就任の目的が「若手有望選手が数年で入れ替わっていくこのチームで、タレントに頼らないような戦術アイデンティティの確立」であったとしたら、それに対しての達成度はイマイチという事になる。来年ホーランは居ないのである。

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なんならブラントも構想外ぽい。

 

なぜマルコ・ローゼはいなくなったのか③

フォーメーションの変えすぎ、故にけが人の多発。

今季のドルトムントはとにかくフォーメーションを変えた。もともとローゼが複数のフォーメーションを好み、相手によって、自チームの状況によって変える監督という事もあり、4-3-1-2に始まり、3-5-2、3-4-2-1、4-3-3、4-2-3-1と一年を通してフォーメーションがコロコロ変わった。

別にフォーメーションをコロコロ変えるのが単純に悪いというわけではない。実際、現代サッカーは単純にフォーメーションの形でどうこうというより、より流動的に、刹那的に選手が立ち位置を替え、ただそれでも全体のバランスを崩さずにゴールに迫るというのがオーソドックスになっている。

ただ、選手がその度重なる変更に対応できるというのは違う。立ち位置が変われば視点が変わるし、対応する相手も違う。求められる運動能力も違えば、使う筋肉も微妙に違ってくる。

つまり選手には負担が大きかったシーズンであった。という事で馬鹿みたいにけが人が発生した。

けが人によってまた戦い方を変えざるを得ない状況になり、また選手に負担がかかり、ケガをする。ホーランに頼るばかりにホーランが離脱すると点が取れない。そんな属人性の高い戦い方も悪影響となった。

一時期は「どんなトレーニングしてんねん、軍隊か」という声も出るくらいけが人が連発。またケガから戻ってきたと思ったらまた同じケガ、のように選手を管理できていないようなこともあり、ローゼ解任にはその責任も関係しているだろう。

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見てるこっちが辛くなるのでケガからの復帰は本当に慎重になってもらいたい。

 

さらばマルコ・ローゼ

 ということでマルコローゼ下げ下げ運動をしてしまったが、一応いいところというか褒める部分も書いておくと、近年のドルトムントは試合下手というか、延々に引いた相手に対して馬鹿正直に中央から突っ込み、見事カウンターを食らうというお笑い芸みたいなところがあったのだが、今シーズンはそれが減ったような気がする。つまり試合中に相手の弱点や嫌なところを見極め、押し込んでから立ち位置を変えて攻めていくという論理的なアプローチが出来るようになってきたというのはローゼが植え付けたと言っていいのではないだろうか。あくまで押し込んでからの話で、それ以前のビルドアップやプレスのかけ方等は未熟であったが。

 

 また、スター選手の扱い方というか、調子が落ち込み気味の選手に対して、きちんとその選手の能力が発揮されるようなポジションを組み込み、気持ちよくプレーさせてあげるというような、「あ、そういう人情味もあるんだ」といったところがあったのは意外な発見であった。

 

 で、なんだかんだ言って2位にはきちんと収まって終わったわけで、ドルトムントの監督としては及第点は与えられていいのだと思う。トゥヘル後から続いた、タレントはいるのに一向に戦い方が上手くならんぞ、何をしたいんだ、、、というような状況はなく、常に今ある手持ちで勝利を探求するという姿勢は1年通してチームを見る楽しみとなった。言うとすればCLの敗退、ELプレーオフの敗退、カップ戦の早期敗退と、リーグ戦のみとなってしまい試合数を重ねることが出来ずベンチメンバー含めたチーム全体の戦術の浸透に影響したことがこの際の期待感という意味ではマイナス評価になってしまったかなと。

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やけくそ感がなかったというか常に試行錯誤しているのは見てて楽しかった。さらば!

 

来季の展望

 さて、ここからは来季の展望を少し。
 ローゼの代わりにやってきたのはエディン・テルジッチ。20/21シーズン途中から暫定監督としてドルトムントを率い、ポカールを獲ってフロントに入った男が1年で現場復帰である。

 具体的な戦い方は結構ロジカルというか、「俺ら上手いんだからその個人を活かすような下地を作ってやれば勝てるやろ!」というような、格上相手にはスッと引いてみたり、ビルドアップも奇策を組まず、当たり前のことを当たり前にやろうねというスタンスの監督である。(少なくとも前回率いていた時は)

 あと、ピッチ脇でのふるまいとかがちょくちょくクロップを意識してるんじゃないかというような動きで、これが非常にドルトムントサポーターに刺さる。若いし。なのでドルトムントでのプレー経験というかサッカー選手としてはそもそも日の目を見ない選手だったが、ドルトムントのレジェンドが監督になりました的にクラブ内外で求心力は高いように思う。またその求心力の高さによって上記の「当たり前のことをやろう」という目標に対して、タレント集団で近道が出来ちゃうような選手もいる中で我慢強く継続できるというのがテルジッチの良いポイントかもしれない。

まあ細かいところは始まってみないと分からない。という逃げ道を作っておきながらテルジッチにはちょっと期待している。

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無観客時代、この人の声が一番響いていた。就任してから動画でコメントするあたりもクロップっぽいよね。

 

 監督の話ばかりになってしまったので選手についても。今夏フロントは大量補強を慣行。また誰もがすでにブンデスリーガやCLで代表クラスの活躍をしている選手であり、ほぼ即戦力としての獲得である。またドイツ代表が多いのも特徴で、「ドイツ代表、ほぼバイエルンやんけ現象」に歯止めをかけようという魂胆である。*6ということで新戦力にも大いに期待していいシーズンではあるが、個人の能力だけでなくチームとしての完成度も求められるのがもはや常識のサッカー界なので、新加入の選手が多い分、チームとしてはある程度時間がかかることも想定しておかないとなぁ、と思う今である。あと選手を売れ。とにかく売れ。そしてラウムを獲得しろ。

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右の人ミヒャエル・ツォルク。ドルトムントがこうしていられるのもこの人のおかげである。お疲れさまでした。

 

 今季はシーズン開始からスタジアムに満員の観客が戻っての試合が想定されている。新加入の選手たちが揃いも揃って「あの黄色い壁が味方になるのは心強い、あの前でプレーするのが憧れだった」というような発言をするたびに、ドルトムントの根底にある魅力というか、強さというか、あのスタジアムがあれば何があっても戦えるだろうと思うし、クラブにはそれに背くことなく期待に応えて戦ってほしい。

 

 

それでは。

SNS等で感想をつぶやき、拡散してくれるとありがたいです。

 

 

選手個人別レビューはこちら↓

yoru-li.hatenablog.jp

 

*1:レンタルに行く前は「俺足元に自信がありますから。」というようなひょろっとしたロイスの代わりになれない選手だった。

*2:一方的な解雇ではなく、双方同意の上での契約解除である。名誉のために一応。

*3:となるとズーレ獲得も理にかなっているだろう

*4:ナーゲルスマンが指揮してきたチームは順位にしては期待値どおりに得点をとることが多い。そういったチャンスクリエイトのためのチーム作りが評価されているのだろう。

*5:ちなみに2位はレバークーゼンの+13.69、3位はライプツィヒの+4.60なので結構ぶっちぎっている。

*6:そういう魂胆ではない。